秋津の島の民なれば


八丁蜻蛉(ハッチョウトンボ)/ Nannophya pygmaea (Rambur, 1842)(長野県にて。オス)

 出掛けて戻ってきたら産卵しているかな、と思ってたヘビが何匹かいたのですが、産卵していませんでした。大抵、「出掛けている間に産卵するんだろうな、こまったな………」と思ったときには、だいたい”出掛けた当日”に産卵されたと思しき状況になることが多かったので、今回は肩すかしを食ったような気分です。まぁ別に、悪いことではないのですけれど………予測がただ単に外れたというだけであって、どうせ、一週間以内に産卵するでしょうし(しなかったら、それこそ問題ですが………)。

 さて写真はハッチョウトンボです。昔からこれは見てみたいなぁ………と思っていた蜻蛉の一つでありましたので、念願叶って感慨深いものがあります。
 ハッチョウトンボに限らず、僕はトンボが大好きなのです。ただ、飼育はしたことないですけども。
 せいぜいが、ヤゴをプール開きの日にヤゴを集めて持ち帰り、上陸するまで飼育する、という程度のことぐらいですかね………昔の話ではありますが。
 成虫も飼育することは不可能ではないそうですが、あまり魅力を感じたことはないような。やっぱり、飛んでこそ、という考えが頭にあるからかもしれません(カナリアなんかだと、鳴いてればまぁいいかな、と思うこともあるのですけど)。

Nannophya pygmaea (Rambur, 1842) male
八丁蜻蛉(ハッチョウトンボ)/ Nannophya pygmaea (Rambur, 1842)(長野県にて。オス)

 蝶が最も優雅に飛翔する昆虫であるならば、トンボは最も美しく飛翔する昆虫ではないでしょうか。

 ここで言う美しさというのは、その飛翔の目的に対して、その形状が研ぎ澄まされているという意味です。勿論、あらゆる生き物はその棲息環境に適するという方向性に於いて、ある種の卓越――探求の途上であるにしてもその片鱗を見せるものではありますが、それが必ずしも人間にとって美しいと感じられるものであるとは限りません。中には、よくわからん、というものもあるでしょう(例えばミミズの進化はそれなりにすごいし、ゴキブリもかなり優れた進化方向だけど、えーと、その、なんていいますかね?(いたたまれない感じで目を逸らしつつ。あ~、でもゴキブリは格好良いの居ますか………うーむ))

 そんな中で、トンボの美しさというのは実に分かり易い。飛翔というその目的に叶う、洗練された機能美に溢れる形状、構造の美しさこそがそれです。

Nannophya pygmaea (Rambur, 1842) male
八丁蜻蛉(ハッチョウトンボ)/ Nannophya pygmaea (Rambur, 1842)(長野県にて。オス)

 昆虫でもっとも自由自在なのはアブの仲間であるように思いますが(ハエよりも……なんか静止してられるし……)……その分、犠牲にしている部分があります。端的に言えば、速度。アブは空中で静止し、方向を固定したまま前後左右上下へ自在に動けるところに、その動きの面白さがありますが、その分だけ、直進方向への速度と持続性が高くない。

 トンボの飛翔は、直線を描く滑らかさ、速度、自在な機動力というバランスが高いレベルで融和している。だからこそ、それが美しいと感じるのだと思うのです。

 とまぁ、ごにゃごにゃ書きましたが――ハチドリの飛び方と、燕の飛び方が違うのは、そもそもその生き様が違うのですから、あんまり比べる意味もないんですけどね………どっちが美しいかと言われれば、どちらも美しい。

Nannophya pygmaea (Rambur, 1842) male
八丁蜻蛉(ハッチョウトンボ)/ Nannophya pygmaea (Rambur, 1842)
(長野県にて。羽化から日が浅く、発色が薄いオス)

 そんなわけで、トンボが好きですが、だからといってひらひらと飛ぶ蝶が嫌いだという道理ももちろんなく。
 蝶の飛行はそれはまた別として好きです。どっちも好きですね。ですから、トンボがそういう飛び方をするから、トンボが好き、というのではないわけです。

 好きだから、なんかいろいろ分析してみようという気になる。分析すると、ああ、ここが美しいな、と考えたりする。そして益々好きになる。こういう風なことは、よくあることと思いますが、ここで生じた好き、というのは、何かに着目し分析しようという心の発露の原動力となっている本来の好きとは、またちょっと違うものであると思います。本来の好きというのは、その、何かをもっと深く、より知りたいと自分を駆り立てる心の発露を生み出す元となるところにある。
 大切なのは何かが好きだということであって、分析してみた結果出てきた何かは、モノに上から光を当てて落ちた影の形のようなもの。別の角度を当てたら全然違うカタチが出てくるかもしれない。影の形を気に入ることはあるかもしれませんが、好きだったりすることは、そうした、その当てる光の元となる何か漠然としたものであって、影に本質があるわけではない。

 だから、美しい美しくないという意味ではミミズとかゴキブリとかどうかな、と僕は書きましたが、僕はそういう生き物も好きですし、また、一般的に同意を得られるかどうかは別にして、そこにはやっぱり、トンボのそれとは違うにしろ、ミミズにもはっと思わせられるような美しさがあるとも思っています。

 何が言いたいかと云いますと、飛翔の仕方はトンボといえどもいろいろあるんでわ?(そもそも蜻蛉も大きくわけて三つの区分があるわけでー)、という疑問はあまり深く考えないでください、ということです(笑)

 別に飛び方が美しいと語ってはいても、飛び方が美しいからトンボが好きなわけではないのです。

 まぁ、考えてみると、このサイトを見ている人には、こんなこと、改めてわざわざ書くことでもなかったかもしれませんね(なんかマイナな蛇が好きで、どうしてそんなのが良いの?と聞かれたときとか、なんでヤドクガエルみたいな飼うのが大変な生き物が好きなの?と聞かれたときとか、そんな時に既に自問自答している筈なので(笑) そもそも爬虫類にしろ両棲類にしろ、クモにしろ昆虫にしろ魚にしろ鳥にしろ、犬猫以外はマイナな生き物ですからねぇ………よもや犬猫しか飼育してないという人は、このサイト来てないだろーし………いえ、別に来ていても問題はないですけど、来る理由が思いつかないので、ないだろうな、と。あったりしますかね?)

Nannophya pygmaea (Rambur, 1842) female
八丁蜻蛉(ハッチョウトンボ)/ Nannophya pygmaea (Rambur, 1842)(長野県にて。メス)

 とまぁ、トンボは飛んでいる姿が美しいと思うのですよ!、という話を書いているにも関わらず、

 ―――飛んでいる写真は一枚もないわけですねぇ………(遠い目)

Nannophya pygmaea (Rambur, 1842) male
八丁蜻蛉(ハッチョウトンボ)/ Nannophya pygmaea (Rambur, 1842)
(長野県にて。羽化して間もないと思われるメスとその脱皮殻)

 …………いや、まぁ、なんというか、撮影むずかしくて………挑戦はしたのですけども………。
 まぁ、このあたりのテクニックは、一朝一夕では身につかないってことなのでしょうけどねー。