玉蜀黍畑の唄/CornSnakeSongs

iconサングロウ/Sunglow

iconAmelanistic+Select


Sunglow (baby female)

 サングロウ/Sunglowとは、文字通り、太陽の輝き、或いは朝焼けに染まる空の色を意味する。

 その名を冠するこの品種は、AmelanisticSelect Breedにより作出されたという。成体になると全身が正しく斜陽の光に染め上げられた空のような赤橙色に覆われる。

 その独特の赤い体色とは別に、斑紋内部の赤の面積が極めて広く、本来黒が入っていたため黒色色素欠損では白くなる斑紋外縁部をほぼ欠くことが特徴として挙げられる。この品種改良の始まりが、体色をより深くしていくことから始まったのか、それとも斑紋内部の赤を広げていくことから始まったのかは定かではないが、比較的古くから存在する品種であるらしい。 セレクトにより成立した品種でもあるので、完成を見た年度は明瞭ではないし、明確に決定されるものではないだろう。とはいえ少なくともそう呼称されるようになった始まりの年があってもおかしくはないのだが、このあたりも判然としないようだ(取り敢えず読んだ文献には明記されていなかった)。ただ、1980年代にはその取り組みが始まっていたことを示唆する原型を見ることが出来るという。Kathy Love女史曰く、Norm Damm氏と、Vince Scheidt氏の両氏のキープ個体をそのベースとするそうだが、それらの個体がどの産地に由来するものかは語られていない。

 いずれにせよ、品種改良の始まりは分からないにしても、その大半の時間が、より赤く、全身余すことなく深く広く赤くするという、赤さを追求するという方向で進められて来たのであろうことが、現在の成果から察せられる。

 黒色色素が抜けた箇所に現れる白が存在しないことから、別名ノーホワイトアルビノ/No-White Albinoと呼ばれることもあるが、斑紋がノーホワイトであること、それ自体はサングロウの構成要素ではあるものの、本質の全てではないだろう。何故なら、キャンディケインあたりの改良で、斑紋内部はノーホワイトで真っ赤で、地肌は橙色がかった黄色というような個体も存在するからだ。もともと斑紋内部と地肌は別の遺伝子によって遺伝すると目されており、それゆえ、こうした様々な個体がいるという面白さがあるのは確かであるが、いずれにせよ、こういう個体はノーホワイトではあるが、だからといってサングロウと呼ばれたりはしない。やはり、サングロウとされるならば、斑紋内部の赤の広さと深さ、そして地肌の濃密な橙、この両方をそれぞれ達成していなくてはならないように思う。

 赤の色調は、経年により更にその色調を濃くすることで知られており、色調の完成まで五年前後を要することもあって、幼体時期ではその真価を見極めることは難しいと云われる。とはいえ、それはサングロウとしての完成を見るのにそれぐらい掛かるというだけであって、他のAmelanisticとは比べるべくもなく、幼蛇の頃から外見は全く違う。幼蛇を見たとき、美しいものが必ず美しくなるとは限らないかもしれないが、幼蛇がさほど綺麗でもないのに成蛇になって綺麗になることのあるハイポラベンダーなどに比べれば、比較的素直な成長変化をする品種なのではないかと個人的には思っている。つまり、綺麗になるものは、大抵、幼蛇の頃から片鱗を窺わせ、そのまま綺麗になり、だいたい半年から一年もすれば、かなり将来像が予想できるぐらいまでにはなるように思う。

 ボア・コンストリクターの影響と思われる誤解として、SunglowHybinoであるというものがあるが、コーンスネークのSunglowは、定義としてはハイビノである必要性はなく、Amelanisticのみで成立するらしい。ただ、サングロウを赤くする過程で、Hypoも導入されたようで、Hypoが入っていないものばかりだとも言い切れないのだそうだが。とはいえ、ハイビノはハイビノで存在し、それは少々、サングロウのそれとは異なるので、サングロウを定義づけるその特徴は、Hypoが入っている事ではなく、選抜交配により獲得されたものなのだろう。

 此の品種は、他のよく知られている”品種”とは、その確立の経緯が異なる。この品種は、ある特定の遺伝子を継承することをその品種の成立条件としているのではなく、営々と幾代にも渡って積み重ねられた選抜交配によって成り立っている。品種という言葉は、ハーペトロカルチャーの中では単一の遺伝子を継承する群に充てられることが多いが、それが総てではなく、植物などがそうであるように、交配により品種が作り出され得るものでもある。そうした経緯で成立する品種が、蛇に於いても既に作り出されている、という一例が本品種であると云えるだろう。

 こうした品種としては、同時期に作出されたBlood Redなども知られており、少ないが他にも幾つか作出されている。ただ、そうしたものの数は少なく、殆どの品種が単純な遺伝子の組み合わせによって決定されてしまうのは、まだヘビの品種改良という歴史が浅いからだろう。勿論、基本となるのは遺伝変異であっても問題はないが、そこからまだ先があるという意味である。

 Amelanisticはコーンスネークの変異遺伝子の中で最も初期に発見された遺伝子だが、その長い歴史が、様々な特徴に重点を置いた選抜交配をして、今日迄に、一つの遺伝子だけで数種類以上の品種を作出せしめた。それを見ると、Amelanistic遺伝子だけではなく、他の変異遺伝子を使ったものでも、こうした観点に基づいた改良品種というものが今後進められていくのだろうと思われる。十年、二十年という時間を要するだろうが、こうした変化こそが、改良品種の醍醐味なのかもしれない。

Motley Sunglow male
6 month yearing 3years old

iconAmelanistic+Select+Motley


Motley Sunglow (3years old male)

 赤系品種最高峰の譽れを冠するに相応しい美しさを持っていると、勝手に思っている品種である(勝手に思う品種が多すぎるとの指摘が各方面から為されているとかいないとか)。

 背中には本来斑紋内部にあった赤が乗り、腹側部は地肌の色合いである橙色。背中に入るモトレー特有の斑紋はやや明るい橙をしている。一見しただけで分かる圧倒的な濃い色調がサングロウから引き継がれた特徴である。

 サングロウという名称から、長らく、ハイビノモトレーかと管理人も思い込んでいたのだが、遺伝子的にはただのアメラニスティックであっても成立するらしい。ノーホワイトアルビノモトレーということになるのだろうが、白い部分がないまま、もとから全体的に色調が濃い品種が、モトレーになったことでより赤みが強く出るので、ちょっと諄いほどである。最初は何故こうもサングロウをモトレーにしただけでこんなに綺麗になるのかと不思議に思ったが、理屈としては、ノーホワイトアルビノであるサングロウは、赤色素胞の総数が、通常のアルビノに比べて多いわけで、モトレーの遺伝子がさらにその色素の色調を増幅させ、模様の組み替えを行うにあたり、黒色色素が占めていた割合を、赤の色素が埋めることとなり、総体的に赤みが強くなるということなのだろう。
 特筆すべきは、モトレーにすると却って目立つ事の多い、斑紋内部の鬆(フロスト)が皆無であるところ。
 モトレーは品種によっては色味部分に鬆が入ったかのようになりやすい傾向があるが、サングロウモトレーは、それを消す方向に推し進め、極まった域で安定している品種である。品種によりけりであるが、色味を重視する品種では、サングロウを入れるとより完成度を高められるのではないかと言われている。特に、黒色色素ではなくて赤色色素をメインに据えている品種では、サングロウを導入することで、面白い変化が期待出来るかもしれない。品種によりけりというのは、例えば、地肌の色を抜いてブロッチの中だけに赤い色味を出したいような場合には、全然意味がないということ。 

Motley Sunglow male
6 month yearing 3years old 3years old 3years old
Motley Sunglow male
(LastUpdate:(2009/08/01))