springtail/トビムシ
トビムシは土壌生物の一つで世界中に分布しており、世界各地の熱帯雨林、雲霧林、洞窟などの、土壌がある場所ならば何処ででも他種多様なトビムシが見られます。(歩いているだけならば、雪の上を歩いてることもあるとか)
ヤドクガエルの自然下での主食はアリやトビムシ類であり、これらの生物は熱帯雨林の面積あたりの生体質量の大半を占めることでも有名です。
日本の森にもトビムシは300種以上いることが知られており、そこらへんの森や林へ行ってちょっと地面を探せば、此らの仲間を見つけることは難しくはありません。しかし、このページではトビムシを餌昆虫として利用したいという前提に立っていますので、再現の容易な飼育環境で大量繁殖が可能な種類である必要があります。
そうしたトビムシの入手方法は、誰かから譲って貰う、自分で捕獲する、の二つがあります。
販売されていることもあるのですが、すぐに売られなくなってしまったりするので、ここでは購入しない方法も紹介しましょう。もちろんあなたがコレを読んでいるとき、どこかで販売されているなら、それを購入するのでもよいでしょう。
入手方法のうちのひとつは、間接的に購入するという方法です。つまり、トビムシが湧いている土壌を入手するということです。植木についていることとかもありますが、国産の樹皮培養土を購入し、適度な湿度と温度のケースに入れておくと高確率で小さい白いトビムシが発生します(小さいタイプのアヤトビムシ上科だと思うのですが、詳細は不明です)。商品名を挙げると、バークファイバーやクリプトモスなどですが、他にもきっと色々あることでしょう。ただ、加熱処理がされていたり、倉庫で長く保存されすぎているとダメかもしれません。このへんは運であり、先述のものでも発生を保証するものではありません。
アヤトビムシと思われるトビムシ。最大で1.5-2.0mm程度と大きく、シロトビムシに比べて高い温度(24-27℃)でも飼育できる。俯瞰すると褐色を帯びた白色に見える。
飼育するのに向いているのは、植物質の餌で殖やせるトビムシでしょう。例えば米ぬか、オートミール、米粉、ビール酵母、ドライイースト、小麦粉製品などなど、身の回りのもので良さそうなものを試してみるとよいでしょう。
密閉空間で大量繁殖したい場合、餌は植物質のものがよく、動物性タンパクは使わないほうが失敗がありません。熱帯魚用のフレークフードなどは、高タンパクすぎ、土壌の劣化の要因になると思われ、長期的に維持する上では向いていないように思います。
■大きい飼育ケースか、浅い飼育ケースを複数用意するか
これは好みの問題ですが、経験上、おそらく効率がよいのは薄いケースを複数用意することです。飼育ケースに通気を持たせたいですが、ダニが入るとトビムシが襲われて壊滅してしまうため、封には工夫をする必要があります。
密閉容器は、高さをあまり必要としないので、どちらかといえば密閉がしっかりできるタッパーウェアがよいでしょう。各種ありますが、最低でもA4サイズ以上の、広い底面積がとれるケースがよいと思っています。
ケースの大きさにもよりますが、フタの中央に直径10-15mm程度の穴をあけ、ダニが入れない#200以上の細かさのステンレスメッシュをホットボンドで接着したものや、クワガタ・カブトムシ飼育で使われる、菌糸瓶の蓋につけるシールを貼り付けたものを使います。後者ほうが手軽なのでオススメです。なぜなら、こうした飼育容器は、数を作る関係上、簡単に作れるものがより優れていると思うからです。
密閉容器でも繁殖はできますが、高密度で飼育するときには酸素不足になりがちで、定期的な空気の交換作業が必要になり、数が多くなるとこれは現実的ではありません。管理人は怠けものなので穴をあけるのが好きです。フタに穴をあけてしまう関係上、容器の積み重ねはできません。ただ、こうした容器は積み重ねてしまうと、何かとメンテナンスが行き届かなくなるものなので、飼育する上ではちゃんと棚を用意して、積み重ねないですむようにしたほうがよいように思います。ストッカーのようにして収納できるものでもよいでしょう。実は容器と棚を工夫すると、既製品を使ってストッカーを作ることが出来ます(蓋に通気口をもうけるほうが簡単で、この場合は積めないから)。容器はラストロウェアのバットキーパーLのようなA4サイズのものを使うこと。棚は、書類棚(書類トレー)を利用することです。ただ、書類棚だと薄いケースしか収納できないものが多いので、ワラジムシなどを飼育するケースも使いたい場合、高さのそこそこある書類棚が必要になります。A4対応書類棚といっても、使えないものもあるので、実際にタッパーウェアを手に、そうした棚を探しにいくとよいでしょう。そして管理人のように不審者がられるがよいですよ?
ただ、個人的には背面がなく、通気性がよいもののほうが良いように思います。なので、自作するのがベストかもしれません。
餌の種類によっては、ダニがそこから混入することがあり、侵入されてしまうこともあります。そういう場合はケースの中身をすべて廃棄して、熱湯で容器を洗ってリセットします。そういう意味でも、複数の飼育容器を作ることは重要です。
深いケースでもダメということはないのですが、いくら土をふんわりいれても限界があって、高密度で飼育できるのは、ほとんど表面に依存するので、あまり意味が無い気がします。用土の工夫でどうにかなるのかもしれませんが………
■用土
用土は、長毛のピートモス、バークファイバーやクリプトモスなどの樹皮培養土、ヤシガラ土などの各種用土はもとより、人工杉皮などの人工物まで、色々使えますので、好みのものをチョイスしてみてください。管理人が自分で考えついたなかで悪くないと思っていたのは、樹皮培養土と人工杉皮の併用でした。
何を使うにせよ、ダニが入ると致命的になりますから、土を使う場合は、熱湯消毒か、電子レンジで消毒をしたほうがよいでしょう(電子レンジでやるときは、適度に水を加えて温めるとよいです。管理人は食用の電子レンジをそういう風には使わない主義なので、熱湯消毒しかやったことはないですが)。ビバリウムのような環境では、土の中のバランスを整えたほうがよく、あまり消毒しすぎないほうが良いのですが、小さい容器でトビムシだけ殖やそうという、かなり不自然なことをする以上、用土の殺菌はしたほうがよいと思います。
土は隙間が出来る様にふんわりと入れます。容器の中はかなり湿度高めにすることが望ましいかと思いますが、このへんはチョイスしたトビムシの種類に依存しますから、このあたりはあくまで目安であり、好む湿度を自分で見つけていく必要があります。 個人的には殆ど100%で良かろうと思っているというか、それで飼育できる種類を飼育しています(ちょっと気温が変化するとケースの上部側面に水滴がつくぐらいで構わない)。シロトビムシやアヤトビムシは、いまのところそれで平気そうなので。
飼育温度もまた、トビムシの種類に依存し、シロトビムシの仲間だと24℃程度が上限というものもいますが、アヤトビムシの仲間には高温に強い種類もいて、26-27℃ぐらいまでは平気だったりするようです。
注意すべきは直射日光で、室温は24℃だったけど、窓際に置いていたケースにカーテンの隙間から入った夏日が差し込み、中が暖かく……というのは起こりえるので、有り体に言えば、暗いところに置いておきましょう。タッパーに入れるトビムシの数は、最初は少ないはずなので、まずはそれを大量に増やすところから始めます。この時期は、少量の餌をまめに与えるようにしないと餌がカビて床材が傷んでしまうので、そのへんの塩梅が重要です。場合によっては一ヶ月ぐらい掛かる作業ですが、トビムシの数が一定の水準に達すれば楽になるので頑張って下さい。
通気性を低くしてあるケースでは、ほとんど水分の添加は必要ありません。ただ、一ヶ月に一度は、水分の状態をチェックして、足りないようであれば加えます。できれば、一ヶ月や二ヶ月ぐらいは水を加えなくても良いような環境を作りたいところです。
此処まで何度か繰り返し書いている通り、ここで挙げたものは、トビムシの飼育方法というよりは、こうした環境でも問題にならないような餌を使い、そうした餌でもよく殖えるトビムシを見つけてきて育てる、というのが正確ですね。日本にも300種以上、400種に迫るぐらいいるらしいですから、探せば飼育環境に合致する種類がいるはず………といっても、それが餌に使える種類とは限らないかもしれないので、そこが難しいところですが……。
毎日メンテナンスをするというのは、管理人はやりたくないので、一週間に一度見て、ちょっと餌を加えるぐらいでよいようなトビムシがいるといいなと思います(ていうか、まぁいます)。
ただ、観察不足だとトラブルが起きたときは全滅の危険があります。例えばカビがそうで、土壌が劣化してくるとカビはより発生しやすくなります。限定された容器の中でトビムシだけを飼育している以上、これは避けられないし、小さいケースではやはり限界はあるでしょう。そこで、作るタイミングをずらした飼育容器を複数用意しておくことで、このリスクに対応します。
移動する時は、新しい場所を用意し、継ぎ植えする感覚で、トビムシを移動するだけです。新しいところに古い土が入るのは望ましくないので、浅い皿やプラスティックの板の上に、古い土を盛り、そこから拡散していくのを待つのがよいでしょう。もちろん、トビムシだけを取り出して移動するのでもオーケイです。
土からトビムシを回収するときは、トビムシの大きさよりは目の粗いぐらいの洗濯ネットに用土ごと中身を移動し、湿らせたクッキングペーパーを敷いたバケツやタッパーの上に、この袋を吊して、一晩ほど待つのが手軽です。あるいは、竹の板や、人工杉皮を表面に並べておき、これらを取り出してタッパーの上で軽く叩いて落とすという手もあります。
カビ以上に厄介なのがダニで、これは密閉容器でも、餌の種類によっては混入しますし、そうでなくても飼育部屋のような場所ではいずれは混ざってしまうものです。特に用土を長く使いすぎるとダニのリスクが高くなるように感じます。総合的に考えて、用土は半年ぐらいで新しいものにするか、よく洗うのが無難だと思います。ピートなどであれば、熱湯消毒をすることで再利用可能ですが、何回ぐらい繰り返し使えるのかというと、此ばっかりはそんな試していないのでわかりませんね………まぁ数回は使えるんじゃないでしょうか……? 二回ぐらいまでしか、管理人はやったことないですが………。