Elaphe carinata carinata (Gunther, 1864)/タイリクシュウダ/King Ratsnake
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体長:平均170-190cm(Max 240cm)
寿命:不明(十年以上はある)
性成熟:飼育下で三年半~四年(自然下では四年~五年前後と推察される)
棲息地:中華人民共和国の一部、北ベトナム(?)
シュウダはユーラシア大陸極東、中国の広い範囲からベトナム北部、台湾まで広く分布し(細かいこと書くの面倒だから端折りました、と書いたら詳細を調べて纏めるのが面倒だっただけで実際のところよく知らないというのを誤魔化せませんかね?)、単にシュウダと云った場合、通常、この原名亜種を指します。管理人がタイリクシュウダという呼称を好んで使うのは、ベトナム北部あたりにも原名亜種とされるものがいること、雲南省あたりには亜種がいることにもなっているので、それとの差別化を図る為ですが、基本的にはシュウダと呼んでいます(<どういうことなの……)。
最大で240cmに達すると云われますが、そういう個体は滅多に存在せず、幼体から飼育下で五年程度を豊富な餌で飼育しても、180-200cm内外止まりといったところです。慥かに初動成長の顕著な蛇で、最初の二年前後で150-160になりますから、広いケージで飼育していれば200cmには数年もすれば達するようです。ただ、そこから先は、越えるには高い壁が峻厳と聳え立っているような、いないような………。
ただ、そんなに巨大なものが少ないのか、といえば、現地ではそんなことはないそうで、近年でも、福建省、浙江省あたりで、ちらほら見掛けられるようです。管理人も実際に、230cmに達そうかというサイズの個体を見たことがあります。素晴らしい存在感で、あそこまでに育てられたらどれだけ素晴らしいだろう、とは思うのですが、飼育繁殖個体でそこまで大きいものは、まだ見た事がありません。成長には、自然下であること――広いことなども重要なファクタなのではないかという気がしますし、それに広範囲、そして標高も低いところから高いところまで生息している蛇ですから、棲息地によって大きさに違いがあったとしても、それほど驚くことではないのではないでしょうか。ただ、近年でも食用として巨大なものが販売されているのを見掛ける――という話なので、まだまだいるけれども、主に食べられてしまうので、国内には来なくなっているというだけかもしれませんが。
何れにせよ、飼育下での育成では、200cmを越えたあたりで止まると考えておいて差し支えはないかと思います。だからこそ、ナミヘビ愛好家は、200cmオーバーまで育てるぞ!と意気込むのですから。普通に飼育していて悠々そのサイズになる種であるならば、意気込まないで気楽に飼育すれば良いわけですからね(そのときは、きっと240cmまで育てるぞ!と意気込むのでしょう)。
現地名では王錦蛇と呼ばれ、この由来は、この蛇に蛇食性があることから来るという風な話もあったのですが、どうも、額板に浮かぶ黒の滲みが、或いは、吻部の黒が、時に「王」の文字になることに由来するという説の方が有力であるようです。英名のKing RatSnakeが此処から来ているのか、それとも蛇食性であるからそう名付けられているのかは定かではありません。キングコブラやキングスネークのキングは、そうした蛇食性から来ていると聞きますが、シュウダに関して言えば、そこまでヘビを積極的に食べるという印象はなく、どちらかと言えば何でもかんでも食べる、というのが正しいところのようです。
つまり、ヘビを食べると言っても、単に食性の幅が広いだけで、マウスで終生飼育が可能ですから、飼育する上ではあまり気にしなくてよいでしょう。他のヘビと一緒にしたら食べてしまうかも、というのはあるかもしれませんが。
王の名に相応しい風格――眼光の鋭さたるや他者の追随を許さぬ圧倒的な存在感で以て次点以下を大きく引き離してナメラ最高峰、それに合わせるようにして気性は峻峭にして峻厳、自己防衛の為の攻撃性は高く、なによりその名に冠するように、強い臭腺を持つという、一般的に人気のない要素を統合したかのようなヘビです。但し、重量があるせいか、動きは早いと言ってもレーサーなどに比べると大したものではなく、大きさの割には動きが俊敏かもね?という程度であり、はっきり言ってしまえば移動速度はヘビの中では別段早いほうではありません。加えて持続力がないので簡単に押さえ込めてしまえますし、攻撃性は高いといっても、常に噛み付いてぐりぐりやってくるようなタイプではなく、他のナミヘビと同じく”当てて”来るタイプなので、それほど懼れる必要はないでしょう。まぁ、偶に咬んだままになることも、無くはないのですが……攻撃のスタイルはあくまで当ててくるだけであり、牙は短めなので皮膚を切られるということも少なく、咬まれたとしてもぽつぽつと傷が残る程度。掴んだりしない限りは、向こうもそこまでがっつりと咬んでくることはまずなく、人間からしてみると、別段怖くもなんともないヘビな気がします。このヘビより厄介なヘビなぞ、ごまんといるといいますか。
そもそも、攻撃してくるよりはそそくさと逃げるタイプなので、攻撃に転じるのは飼育下のような逃げ場のない状況で掴まれた場合などに限定されます。掴まれたとヘビが認識した場合、手に対してがっぷりと咬み付いて来ることがあります。この場合は、結構痛いかもしれません。とはいえ、此はもう触り方が悪いのであって、掴んだりしなくとも御する事は可能ですから、人間の方が技術を磨くことで対応してください。接し方を間違わなければ、どのような蛇も荒くなどないものです。
シュウダともなれば、すぐ話題に上る臭いも、扱い次第であって、例えば雌雄判別などをする際のように捕定すべくがっちりと掴んだりした場合などは臭いを出すこともありますが、そういった”掴む”動作をしなければ出しませんから、扱い方次第で何とでもなります。例えば、軽く手の中で巡らせるようにして扱えば、手で掴むにしても、圧力を掛けるのではなく、常に動かす形で、手のひらで包むようにして持てば、臭いを出さない傾向が強いです。
扱い方一つで、臭いも荒さも問題にはならないので、別に此のヘビが大人しいと主張するつもりはありませんが、少なくともそこまで(世間一般で畏れられるほどには)扱いづらいヘビではない気がします。重量的にも、あまり体力のない管理人でも扱い切れる範疇ですしね。とはいえ、では扱い易いヘビなのか?と問われれば、いや、扱い易いヘビではないなぁ、というのが返答ではあるのですが。
慣れれば、おそらく一年間の飼育で臭いを出される回数は、一回もない、ぐらいになると思います。実際、雌雄判定をする時以外で、管理人は此処一年を思い返してみるに、臭いを出された記憶がありません。個体によっては、五年ぐらい飼育していて、一度も臭いを出された記憶がないなぁというものも居ます(ちなみに、管理人は基本、ヘビを扱う時は、フックとかは使わず、素手で触ってます。グリーンパイソンとかはフックないと流石に厳しいですが……)。
もっとも、管理人が取り扱う時というのは、掃除をするときぐらいですけれどね。しかし、おそらく、積極的にハンドリングするにしても、匂いを出させないハンドリングの方法というのもあるのだと思います。管理人はメンテナンス時の必要がある場合を除き、ハンドリングをしないので、そういった技術に通暁してはいませんが、ヘビの扱いに慣れた人がするすると持っているのを見たことがあります。逃げようとしたものを腕の中で巡らせ転がして逃がさないようにしていましたが、臭いは出しませんでした。
そもそも、臭いに関しては、やや噂が先行しすぎている感があるという気がします。シュウダが臭う臭うと云われる最大の理由は、流通していた個体の大半がWCであったことも一因ではないかと思うからです。多くのナミヘビがそうであるように、シュウダも、CB個体は臭いを出したとしてもWCよりはやや弱い傾向が強い印象があります。臭うことに違いはなく、かなりな臭いが、なかなかな臭いになる程度の差でしかないかもしれませんが、それでも心持ち違うように感じます。臭いの差は、個人的な主観の入り込む余地がありますが、しかし、最大の違いは、他にあります。それは、そもそも性格がWCとCBではかなり異なり、CBは飼育下で生まれたことで多少なりとも馴致され、興奮しづらく、あまり臭いを出さなくなるということです(咬むあたりは変わらないのですが………)。この辺りは個体差もあり、必ずしも全ての個体が大人しく臭いをあまり出さないとは言い難いところがありますが、傾向として、臭いを出す度合いはCBのほうが圧倒的に少ないように感じます。累代が進めば、さらに大人しくなっていくのではないでしょうか。現時点でも、CB個体が臭いを出すのは、取り扱いが下手な人がヘビを掴んだ場合や、雌雄判別をする為に捕定したときぐらいではないかと思います。
そんな訳で何が言いたいかというと、臭いとか大した問題ではないように思うのですが?、ということです。扱う技術次第で、どうとでもなる部分だと思うので………。ただし、いざ臭いを出されてしまったら、これはもう弱かろうがどうしようもなく、換気をして服を交換して入浴する必要があるのは事実ですが(笑)。
衣服や床などに臭う液が付着してしまうと、これが拭いてもなかなか取れません。その場合、キッチンハイターなどの次亜塩素酸系の消毒薬や、ビルコンSなどをさっと塗布して洗うと臭いがしなくなるのだそうです(まぁ、ハイターでなければ取れない、という事なので、或る意味、面倒な代物であるということを証明しているのかもしれませんが……(笑)) 勿論、ハイターですから肌につければ肌は痛みますし、服につければ脱色してしまいます。体験談を聞いただけで、管理人はやったことありません(肌は真っ赤になるそうですし………って当たり前ですよ)。
幼蛇。成蛇とは全く異なる体色をしている。 成体は、原色の黄色と黒、そして鱗の隙間に覗く白。特に白と黒は艶のない特徴的な色をしており、これが体躯の大きさも相俟って他に類を見ない美しさを見せます。艶のある黒ではなく、艶のない、水を垂らせば吸い込んでしまいそうな墨色の妙を愉しむ為だけにこのヘビを飼育するというのも一興でありましょう。
いずれにせよ、この黒や黄色といった全体的な色調は生後二年から三年で完成を見るので、亜成体ぐらいではまだまだです。孵化して直後の幼蛇は、茶色~やや赤みの入る茶色で(腹部はオレンジっぽい茶色であることが多い)、黄色と黒が生ずるのは成長させ方にもよりますが、半年から一年ぐらいしてからです。幼蛇の頃から目つきが悪いと評判で(笑)、模様と縦条が入るところは、シマヘビの幼蛇を彷彿とさせる気もします。
とはいえ、こういった黄色と黒が目立つものは、最も過去に流通量が多かったシュウダがそうだという事であって、全てがこういう個体だという訳ではありません。そうではないものも知られています。というか、昨今は黒の面積が多いシュウダは見掛けなくなったような気がしますね。
兎にも角にも、広い範囲に生息している蛇であり、また標高の高いところにも低いところにもいるらしく、比べてみると結構いろいろなタイプがあります。黄色がかなり薄く、山吹色に近いようなものもいますし、黄色の面積がとにかく広いものもいたりします。単純な色や黒の面積の広さだけでなく、そもそも模様自体にも、幾つかタイプがあるようです。
問題は、こうしたタイプの違いが、地域に根ざしたものであるのか、単なる偶発的なものの範疇に含まれるか、ということかと思いますが、黒と黄色のものにしても、例えば四川省あたりにいるものと浙江省あたりにいるものでは、無論個体差はありますが、それを差し引いてもかなり違ったカラーリングをしているような気がします。これが地域に根ざしたものであるかどうか、というのは、詳細な調査を待たねばならないところでしょう。
ただ、ここ五年ほど、北部の個体群のように黒い個体が流通しているのを、管理人は見たことがありません。これら、北部から北東部あたりが産地とされる個体が出回っていたのは2002年ぐらいまでで、2003年以降は殆ど見掛けなくなってしまいました。もしも、黒い面積が広い個体が、ほぼ全域にランダムに見受けられるならば、それ以降、例えば湖南省あたりの個体として流通した頃(確か2003-2004年頃)であっても、誰かが恣意的に黒いものを日本に輸出しないようにしているという事がない以上は、そうした個体が見られても良さそうな気がします。しかし、今の処そういう事はなく、また、同じ採集地と思われる同じ時期に輸入される個体の外見の変化は、かなり狭い範囲に収まったものでしかありません。
おそらく、スジオよりもシュウダはその外見的な変化に富まない反面、均一な外見をしたものが広い範囲に分布するのではないかな、という気がします。しかし、中国は広いですから、その北端と南端を比べてみれば、別物になっている、といったような………。
こうしたシュウダのタイプ――模様の入り具合と色合いが異なるので、外見で区別出来る個体群らしきもの。地域個体群として確立されている確証はない――は結構数が知られていますが、タイプ別に繁殖されているものとなると、見掛けた記憶があるのは、四タイプぐらいではないかと思います。もちろん、中間的なものがいて、明確に分けられているものではないだろうと思いますが……。たぶん、まだ見ぬものとかも、色々といるのでしょう。
何をして管理人は違うと表現しているのかというと、分かりやすい例を挙げますと、黒いか、黄色いか、というもの。
黒いほうは、額板を始め頭部に入る黒が、鱗全体に染み入るように広がっているもので、これは下半身の鱗一枚一枚も、黄色よりも黒の面積も広くなっていて、中には真っ黒な鱗もあるほどなので、全体的に昏い存在感のあるヘビになっています。
対して、黄色いものは、顔は黒に黄色が入っている、というよりも、黄色い顔に、鱗を縁取るように黒が入っている、というような風貌になっています。このタイプでは、顔の黄色は、橙色から蛍光に近い明るい黄色まで、多少幅があるようです。さらに、下半身の鱗一枚一枚の、黄色の面積も広くなっているので、全体として、黒と黄色の華やかなヘビという印象になります。
これらそれぞれは、それぞれで繁殖させれば、その子は親の外見そのままの個体になるようです(まだ例が少ないので確証はないのですが………)。もちろん、多少幅は生じるようでし、おそらくは、自然下でこの二つのタイプが棲息している地域の中間あたりには、この二者の中間のものもが普通にいるのでしょうが、少なくともそれぞれの特徴を洗練させ作り込むことは可能であるのは確かだと思うので、それぞれのタイプをそろえて繁殖を試みられれば、またより楽しめるのではないか、と思います。実際そうしている人はいるようです。
Elaphe属が再検討された後も、Elaphe属に残ったようです。というか、検討されなかったので残ったのでしょう(確か論文の中で触れられてなかった記憶が。触れられてましたっけ?)
鱗に稜線(キール)があり、独特の肌触りが面白いのですが、故に、ナメラと呼ぶのは不適当な蛇だと言えるかもしれません。だからか、そんな事よりも臭いの凄さの方が問題だったのか、本種の和名はシュウダであり、ナメラのナの字もありませんが……
シュウダって呼び方は字面も含めて格好良いので好きなのですが、臭蛇って書くと、なんか格好良さが当社比97%ダウンする気がします……何故でしょう……ちなみに、此の匂いはやはり西洋人にも気になる人はいるようで、Stinking Goddessなんて呼ばれることもあるとか……。
■飼育/Keeping■ (>>menu)
丈夫と見せかけて、実はあんまり飼育の簡単な蛇ではなかったりします。CBで餌付いているものならば簡単ですが、WCの飼育は難しいとまでは云えないまでも、易しくない部類でしょう。まぁ、簡単だという人がいるかもしれませんが、そういう繁殖させているような人が言う「まぁ、簡単だよね」は、信用なりませんからね(笑)
難しい、というのがタカサゴナメラやベニナメラやツマベニナメラに使用される言葉だから、まぁそれに比べれば簡単だ、と云っているだけでしょうから………余談ですが、個人的には、シュウダもスジオもWCは簡単だと思ったことは無かったですね……まぁ、比べたら、スジオよりかはシュウダのほうが簡単かな……?
簡単でない要因のひとつは、もともと体力はあるものの、広い場所を好むヘビであり、活動的でもあるので、狭い場所で飼育しようとするとストレスから体調を崩してしまう事が多いからだと思われます。逆に言えば、飼育環境に馴致され、長く飼育されている個体、つまり飼い込まれた個体ならば、WCであってもそれほど難しくはない、ということでもあります。
最初は狭いケースでは鼻先を痛めてしまうような、導入直後の個体だったものを、広めのケースで飼育し、段々狭いケースに移動していったところ(こういう移動は、シェルタの中に入っている時に、シェルタごと移動してしまう、といのがポイントだったのだと思います)、最終的に最初入れた時には鼻先を痛めてしまっていたようなケースサイズでも、問題なく飼育できるようになりました。しかし、一度でも気に入らない状況に置かれた場合、それが改善されたと認識しない限りはいつまで経っても落ち着かないという性格をしているようですので、シェルターを入れていない状態で落ち着いていなかったのでシェルターを入れた、とかではなく、ケース自体を変更してみたりする、ぐらいはすると有効であるようです。
もう一つの要因は、もともと様々なものを食べているので、WCの寄生虫は相当いろいろなものがいる事でしょう(調べて貰ったら、色々居たよ、と言われました)。駆虫せずとも、ストレスさえ掛けなければどうにか飼えなくもないので、このあたりは、やはり本来は丈夫なヘビであるということなのかもしれませんが、長期飼育するには、また同居個体が他に居る場合などは、駆虫をしたほうが無難だろう、というのが管理人のスタンスであり、駆虫をするようにしています。
このように、神経質な部分のある蛇なのですが、元来は体力のある蛇ではあるので、体調が万全でなくても、二、三年は生きていられるのです。此処が落とし穴で、生きているので大丈夫かと思いきや、体調を落とした個体は、餌を食べても今ひとつ太らなかったり、活発さを失って、だんだん痩せてきたり、外見上は大丈夫に見えても体重は軽くなり、そのまま放置すると、どうやらぱたりと死んでしまうようです(そうなるまで放置するのはどうかと思いますが………)。或意味、種としての強靱さが裏目に出ているというか、そこに甘えていると、いつまで経っても長期飼育ができない、繁殖させようにも遣る気を見せない、という事になるので、生きているか、否かではなく、気質(大人しいシュウダはただ単に元気がないだけです<問題発言)、餌食い(及び、糞の状態)、肉付き(重さ)、脱皮のサイクルといった諸々を見て、状態を把握していくことが飼育する上では大切ではないかと思います。
という風に書いた内容で既に表明しているかと思いますが、他頁でもくどくど書いていますように、WC個体の飼育はオススメしないのが当サイトのスタンスなので、以下はCBの飼育に就いてです(勿論、飼いたい人は飼えばよいと思いますけれど。管理人も飼いたいので飼ってますし………ただ、人に薦められるようなものでは全くないというだけであり、誰かに飼育を推奨するものではない、ということです)。
ただし、2000年代に入って流通するようになった中国CHに関しては、飼育が極端に難しいので此処では飼育できるものとして扱いません。中国にもしっかりしたブリーダーは居られるようで、そうしたブリーダーが繁殖させたCBに関してはこの限りではないのですが、CBとしておそらくCHと思われるものが流通することが多々ありました。管理人も数年に渡り、何度も入手したのですが、入手してから一週間から二週間前後で何をする間もなく死んでしまうというどうしようもなさであり、どうすれば飼育できるのか皆目検討も付かないです。というか、自分で繁殖させていて、CBは丈夫だということを知っている身としては、一体何をしたら幼蛇をそんな風に痛めつけられるのかというところが疑問です。
ただ、このあたりのものは近年、あまり流通しなくなった感があり、2007年ぐらいから輸入されているものは、ナミヘビ飼育の基礎知識があれば、十分飼育できるもののようです。これらを入手したことはないのですが、全部が全部ではないものの、概ね、よく食べ、飼育しやすいという話を聞いているので、以前CHを入手したけれど、満足に飼えなくて死なせてしまった、という方は、苦手意識を持たずに再チャレンジしてみては如何でしょうか。
CBの飼育は、中で動き回ることの出来る程度には広いケースと、必ずシェルターを用意すること、出来ることならば潜れる床材を用意することがポイントです。
狭いと脱走しようとして鼻先を押しつけ、ひどい場合だと変形してしまうぐらい、ぐいぐいとやってしまうので(これは個体差がかなり大きな要因を占めているようで、CB個体ではそういう性質のものは少数派ではあります)、必ず広めのケースで飼育すること、かつ、隠れられる体に密着するサイズのシェルタを用意することが大切です。シェルタがない、つまり隠れるところがなく広いと、落ち着かないようで餌を食べてくれなかったりしますから、何かしら必ずシェルタを設置するのがよいでしょう。
シェルタを入れると、ずっとそこに入りっぱなしになってしまい、飼育者に慣れないので、いつまで経っても臆病で荒いまま、というデメリットが感じられるかもしれません。ではシェルタを入れなければ慣れるかというと、結局のところそんなことはなく、ケースを空けた瞬間に驚いて中から飛び出すようになるだけなようなので、落ち着いて餌を食べ、鼻先を痛めたりする様子がないのを確認してから慣れさせるので遅くはないでしょう。
潜れる床材を用意する、というのは、環境に慣れさせるのが目的です。シュウダは積極的に潜るヘビではありませんが、選択肢として”潜れる”ということはプラスになるかは定かではなくとも、マイナスにはなりません(ただ、口の中に入ってしまう虞れがあるというデメリットは否定しきれませんが………ただし、健康な個体であれば、問題にならないのが普通です。より正確に言うならば、健康な個体に問題になるような床材は、床材として不適だということですが)。最終的に飼育されることに馴致された個体であれば、新聞紙のような紙の床材でも飼育することは出来ますが、最初の頃は、土やウッドシェイブのような、潜れる環境が良いように思えます。それなりの深さがあれば別ですが、数センチ程度では、積極的に潜るということはなく、単に掘り返したり中のシェルタなどを移動したり水入れの中に土を入れてみたりするだけですが、入れる場合と入れない場合では、その環境への慣れの早さが、やや違うように思えるからです。掘れる環境では一頻り土を引っかき回した後、シェルタに落ち着く傾向があり、これは紙を敷いたケースにシェルタを設置したときよりも、落ち着きやすいように思えました。
とはいえ、此の辺りの環境に順応する速度というのは、個体差――性格気質に多分に影響されるようです。慣れ易い個体は、一度そうした環境を経験していると、移動した先でも直ぐに、紙床材にシェルタという環境に適応する様に感じますが、防衛本能が強い、また臆病な個体では、適応までに時間が掛かる傾向があります。
シュウダの場合、この環境に慣れる迄の時間がどれぐらい掛かるか、というのが、重要な問題になります。それは、ケースが気にくわないと、ケースの素材が撓むか、撓まないかに関わらず、兎に角脱出しようとして、例えば空気の流通がある蓋の部分などに吻部を強く押し付け、潰してしまうことがしばしば起こるからです。此の辺りは、同じ親から生まれても、個体差がある気がします。
CBでは起こりにくいとはいえ、飼育下で生きる事に慣れた成体は別にして、幼蛇の段階では起こりやすく感じるので、導入直後の観察が欠かせないと思います。幼蛇の時に強く鼻先を潰してしまうと、それが一時的なものであれば良いのですが長期にわたってしまうと、終生そのままに成ってしまうからです。管理人は何度か、CB個体で、そういう風に育ってしまった個体を見たことがあります。
土などの素材で飼育することのメリットは、掘り返したりしている様子から、個体が現在の環境を気に入っているかどうかが視認し易いというところがあるでしょう。湿度の案配など慣れるまでは難しい部分はあるかもしれませんが、紙の床材だけではなく、土の床材にも慣れるようになると飼育の幅も広がるのでオススメです。
また、物凄く慣れにくい個体などは――例えば、土を掘り返したとき、地面の底から現れるプラケースの透明な面を見て、そこから脱出せんと鼻先を押し付けるような個体などは、ケースの底面、側面などに、新聞紙を貼り付けて覆うようにすると良いようです。
よく触って慣れさせるなどの方法で、シュウダが馴致されるかどうかは分かりませんが(管理人はそういうのやったことがないので)、少なくともシェルタに入っていればケースを空けたときでもそのまま動かないで呉れるので掃除は簡単です。それに、慣れさせたいならば、少なくとも導入直後ではなく、一ヶ月二ヶ月してからゆっくりと遣って行くほうが安全かと思います。
環境に慣れて来れば、またシェルタの中が気に入っている様子であれば床材は何でも構いません。管理人は、腐葉土、黒土、マルチング材、ウッドチップ、ウッドシェイブなどが適していると考えますが、これはシュウダは大食漢で糞も多いので、新聞紙のようなものは水気を受けきれない印象があるからです。紙では飼育できないということもないのですが、あまり大人しいヘビという訳でもないので、糞とその周辺をささっと掃除できる土系の床材が向いているのではないでしょうか。紙では、ケースの中身をすべて出さなくてはならなくなります。それに、鱗の質感からすると、個人的にはある程度の湿度を持たせた床材で育成したほうが、美しく仕上がると思います。
管理人は、ヤシガラ土と、杉樹皮培養土を併用して飼育しています(100円ショップで販売されているパームピートや、杉樹皮から作られたマルチング材、バークファイバーやクリプトモスなどと呼ばれる製品などです)。
シュウダは防衛本能に基づく攻撃性が高いと先に書きました。具体的には、積極的に人間に対し噴出音による威嚇、咬む仕草などを見せることで知られています。これは事実ですが、管理人が飼育してみた範囲では、CB個体はWCに比べると大人しい気がします。人慣れはあまりしないし、ばたついて逃げることはあるのですが、あまり咬む素振りを見せないように思うからです。此の辺りは、前述の触っているか触っていないかが影響するかもしれません。ただ管理人は殆どヘビに接触することなく飼育しているので、そのロジックで行けば荒い個体ばかりになる筈ですが、それでもWCに比べると攻撃性が低いように感じます。WCが手に掴んだ後も積極的に咬んでくるのに対し、手の中で動こうとするものの、攻撃に転じてくることは、無いとは言いませんが頻度としては相当低くなっているようですし、中には、一度も咬む素振りを見せた事がないような個体もいますから、此の辺りの蛇は結局のところ、飼育されてからの歴史が浅いから荒いだけなのではないか、という気がしなくもありません。数世代繁殖が進めば、大人しい個体が主流になってくるのではないでしょうか? そうなったらそうなったで、少々物足りなさを感じてしまうかも、と思うのはおそらく少数派なのでしょうけれど。
基底温度は25-28℃。夜間は20-21℃まで下げても問題はないでしょう。高温に弱いヘビだという印象はありませんし、おそらくは適応性はそれなりにあるのではないかと思いますが、飼育下でどれぐらい迄ならば余裕で飼育できるのか、という実験を試みた経験がないし、試そうという気も起こらないので、上限温度は分かりかねます。餌はよく食べ、消化力も強いので、どんどん大きくしてしまいましょう。ちなみに下限はもっと冷えていても別に飼育できるんですけれど、飼育下では何かと大きい餌を与えることが多いと思うので、温度は高めに飼育しておくのが安全ではないかという気がします。
ただし、大型ナミヘビの多くがそうですが、初動成長が鈍る頃合い以降に餌を与えすぎると、肥満に陥る傾向があります。シュウダは初動成長が顕著にあるほうなので、巨大個体を目指すならば、成長と共にケースを大きくしつつ、どんどん餌を遣るのでよいと思いますが、しかし成長が鈍化したように感じたら、すぐに絞る方向で調整する可きかと思います。
この辺りは、活発に動ける環境なのか、飼育温度はどれぐらいなのか、マウスなのかラットなのかという部分も関係してくるでしょうから、何が目安なのかというのは表現しづらいのですが……基本的に、幼蛇の砌にそのヘビが持っていた全体的なフォルムの雰囲気が崩れないように、と考えてみると分かり易いかもしれません。シュウダに限らず成蛇になると大型ナミヘビの多くは重量感が出てきて幼蛇の頃とはがらりと違うものではありますし、シュウダにしても成蛇のほうが太く、幼蛇の頃は細いのですが、しかしそれでも、雰囲気的に、そのヘビの持つ生き様というか、存在としての鋭さなんかは、変わらないものだという気がします。抽象的ではありますが。
■繁殖/Breeding■(>>menu)
シュウダの繁殖は、まず健康なペアを揃えられれば半分はクリアです。
ただ、これが簡単かというと簡単でもないような気がするのが難しいところです………というのも、尻尾が太く、鱗と筋肉が硬いのでポッピングでヘミペニスを確認するのが難しく、プローブで調べようと思うと、オスは12cm、メスが9-10cmくらいみたいな(数値はあくまで例です)、見分けづらいところがあるからです。体長が同じならば比率で分かるかもしれませんが、オスが200cmで雌が180cmの場合は比べて判断して正しいのか微妙な感がありませんか?
同様の理由で、尻尾の長さで判別するのも、確実性に欠ける感は否めません。更に云えば個体差もあります(地域差までは分かりませんが……)。幼蛇の頃は、あまり硬くないのでポッピングし易く、その頃であればオスは容易に確定でき、その個体と比べると、雌もプローブがそんなに挿さらないので、案外分かるのですが、メスだけがいる場合だと、かなりの長さ挿さるからオスかなぁと思っていると実はメス、なんてことがあるかも知れません。
つまり何が言いたいかと言うと、ペアリングして発情が見受けられても交尾が成功しない場合、第一に雌雄判別を疑ったほうが良い、ということです。いやホントに。管理人はシュウダの雌雄判別は、本気で訳分かりません。いや、調べてはいますけれど、確信を持てないのです、ホントに。ポッピングに成功したら、オスだな、と確信できますが……。でもポッピングすごく難しいし、シュウダでポッピングって、臭い出されること間違いなしだし…………はいそこ、単純に雌雄判別が下手なだけじゃないのとか言わない! 全くその通りですけれども!
あ、ちなみに雌雄判別するときは、プローブとかであれば上手くやれば臭いを出されませんが、まぁ大抵は上手くいかないので臭いを出されます。こればかりはどうしようもないので、ちゃんとそれ用の服を着て、お風呂にお湯を張って、換気扇を廻しつつ空気清浄機を利かせて使い捨て手袋をして挑みましょう。洋服は、タンパク質を分解するの向いた洗剤を使えば匂いが落ちます。床とかに付着しちゃった場合はキッチンハイターに御出座いただければどうにかなります。でも衣服やカーペットは脱色しちゃうから注意が必要です。脱色しても良い服を着ておけば、臭いをつけられたところでハイターにご登場願えば家族に誤魔化せるかもしれません(たぶん無理だと思いますけどっ)。空気中の匂いの場合は、ファブリーズとかがけっこう効きますね。カーテンなどの布には匂いがついてしまうので、ファブリーズを使うとよいでしょう。ただ、ファブリーズは生き物にはあまり良くないので、使いすぎないこと、直接生き物に掛からないよう気を付けて。
発情は、冬化処理をすることで促せます。冬に3ヶ月から4ヶ月程度冬眠させます。寝かす温度は10-12℃あたりが管理人のところでは成績が良いようです。12-15℃でも、発情はしますので、温度に幅をつけても問題はないとは思いますが、このあたりの温度が産卵するか否かのファクタになっている可能性は、ひょっとするとあるかもしれませんね。もっとも、広域に棲息する蛇ですから、本来の棲息地のそれに準拠するとすれば、その温度帯や期間にも幅があることになるでしょうが。
本種の臆病な気質の関係で、交尾は観察していると順調に行われないことが多いので、管理人は大きな発泡スチロール板や段ボール板に穴をあけて、それ越しに観察していましたが、「2000円ぐらいなんだし、Webカメラで観察すればよいのでは………」と言われました。全くその通りですネ!
確証はありませんが、途中で刺激を与えないほうが良いような気がします。CBの場合は、比較的見ていてもスムーズに進む個体もいるようです。あまり観察していないので、交尾時間の正確なところは分かりませんが、そんなに長くないようです(2-4数時間程度かな………一回カメラで観察してしっかり計測しようかな)。シュウダは蛇食性があることで知られますが、今までのところ、メスがオスに食べられちゃった!とか逆とか、そういう経験はありません。これが発情させているせいなのか、同種の場合は蛇食性を発揮しない傾向があるせいなのかは判然としませんが………(現時点では、取り立てて調べる気にもならないし………)。
産卵は飼育温度にもよるでしょうが、交尾後、60-65日前後で行われます。産卵数は個体の大きさにもよりますが、180cm程度の個体でも8-10個ぐらい産卵します。産卵直後の卵の大きさは、小さいもので長さ55mm幅28mmぐらい、大きいものになると長さが90mm幅38mmに達します。大きい卵を少数産むか、小さい卵を多く産むかは、個体の大きさだけでなく個体差の範疇であるようですが、ある年には普通サイズの卵を11個産んだ個体が、翌年にはやたら大きい卵を7個と小さい卵を1個の計8個産んだときがありましたので、個体差があった上でさらに、その年々によって何が要因かは定かではありませんが産卵数にばらつきが出るようです。
孵化期間 孵化温度 雌親
53日(8/12-10/11) 26-28℃ LH(2009)
57日(8/10-10/06) 25-27℃ LH(2010)
59日(8/02-09/30) 25-27℃ L(2010)
60日(8/12-10/11) 25-27℃ S(2010)
24℃ぐらいで孵化させた時は記録を採っていなかったので分かりませんが、話によれば日数がもう少し伸びるようです。シュウダでは26℃が孵化には最適だという話もあるので、25-27℃といった温度で管理すればよいでしょう。夏場の温度を考えると、屋内でこの温度を維持するには終日空調を効かせておかないと難しそうな気がしなくもありません。真夏日とか、軽く30℃を超えてしまいかねませんが、30℃以上の温度帯で孵化させると、孵化仔のサイズが小さくなるとかそういう話もあるので注意したほうがよいでしょう。過ぎたるはおよばざるが如しというやつですね。いずれにせよ、夏に孵化させる関係上、空調は効かせているでしょうから、室内で普通に孵卵すれば孵化すると思います。
幼蛇の餌食いは良く、難なく餌付けられると思います。孵化サイズにもよりますが、孵化直後からピンクマウスのMサイズからLサイズぐらいは余裕で食べられます。注意点があるとすれば、孵化直後の時点で、最低でもNISSOのPC-5ぐらいの広さとシェルタが必要で、潜れるぐらいの深さに土を敷いたほうが良いというところでしょうか。これは、小さいケースやシェルタがない、潜れないといった環境では、落ち着かないので餌付かないし、ひたすらに脱出を計ろうとして吻部を潰してしまう個体が出るからです。特に、幼蛇のうちは潜れることが重要で、シェルタがあっても潜れない浅い土などでは、落ち着かないで餌付かないことがしばしばあります。浅い土よりは、新聞紙とかのうが実は隙間に入って落ち着いてしまい、あっさり食べることもあったりするので、土を使う場合はしっかり潜れるぐらい、厚さ4-5cmは敷くのを意識すると良いのではないかと思います。また、潜った時に、底のほうで丸まったときに空間が出来るような、ほどほどに掘りやすいが崩れないというような素材がよいでしょう。管理人はヤシガラ土をよく使っています。
もっとも、このあたりは個体差がけっこうあるようで、中には、狭いところでもぼやーっと餌を食べ、シェルタがなくてもほやーとして落ち着き払っちゃって、手にとってもぽえーとしている大人しいのも時折いたりするんですけれども。
シュウダは遺伝性の突然変異がいくつか知られています。広い範囲に棲息し、もともと地域で表現に差があるため、同じ遺伝変異でも外見がだいぶ変わって見えるものもいます。例えばアルビノは過去に複数の個体が捕獲されましたが、そのうちのいくつかは、違う地域で捕獲されたものでも、遺伝子の変異としては同じタイプのものだったようです。ただし、違うものもあったようですが……?
▽Elaphe c. carinata var. T-Albino(Amelanistic)/アルビノ
var. Amelanistic 美しい変異だが、通常、程度の差はあれど額板の形状に異常を来す。欠損することも珍しくない。他の種類のアルビノでも、そういったタイプのものは散見されるので、驚くには当たらないが(例としては、トランスペコスラットスネークや、ホウシャナメラなど)。
黒色色素欠損=Amelanisticの突然変異。
野生下での出現率は其程低くはないらしく、管理人が知る限りでもWCが日本に限っても、七個体ぐらい輸入されているかと思います。おそらくもっと来ているのだろうし、海外を含めればかなりの数が存在するのではないかと推察されます。実際、海外での繁殖例も何例か知られていて、それらの個体が輸入されたこともありました。
国内では、また、2000年代初頭には固定され、以後何度か繁殖がなされています。一番最初に固定され、おそらく飼育下で繁殖個体の個体数の一番多い変異がこれでしょう。この遺伝子を持つものは、額の鱗が一枚多い、少ない、ズレている、小さい、歪んでいる等の異状が生じやすいようです。この辺の奇形は、どうもホモであれば多かれ少なかれ出る、と考えてよさそうです(こういうアルビノは、トランスペコスラットスネークやホウシャナメラなどで知られています)。
ただし、これは一番最初に固定されたアルビノ――カナダやアメリカで固定されたアルビノと共通の遺伝子であるようです――に見られる現象です。此迄のアルビノと互換性のない、額板が欠損しないアルビノが存在する可能性が近年示唆されています(2010年ぐらいだったかな?)。このあたりは、今後十年以内には検証され明らかになることでしょう。
黒色色素を失い、黄色と地肌の乳白色だけのヘビになるのですが、シュウダは、産地によって、或いは個体差によって、全身の黄色の面積が変わってくるものなので、そこのところに品種改良の余地があるのではないかと思います。それから、黒があるときには沈んでしまってよく分からなかった鱗のキールが明瞭になるので、他のヘビとは違った印象がより楽しめるというのも、ポイントが高いのではないでしょうか。
▽Elaphe c. carinata var. T+Albino(Amelanistic)/ラベンダーアルビノ
var. T+Albino/Lavender Albino/ラベンダーアルビノ。模様もよく見えて美しい。瞳はクリアな葡萄目をしている。 大陸のシュウダ、スジオでは色彩変異が少ないながらも定期的に発見されていました。此は、出現率が高いと言うよりも、広範囲に分布する蛇であるが故に、発生する数が多いこと、なにより、近年までは食用として商業的に大規模な捕獲が行われていた為に、発見され易くなっていたからだと云われています。といっても、近年までと註したように、これは過去の話で、食用に消費され続けたことも手伝って、野生個体は壊滅的に数を減らしているそうで、現在捕獲は禁止されているのだそうです。このあたりはスジオも同じです。ただ、商業的に販売することは禁止されてはいるものの、現実問題として食用も露天売りのようなことは続いているそうですから、状況は何も変わっていないようですが。
それはさておき、比較的出現率の高い変異であるらしく、過去に複数の個体が捕獲されています。管理人自身、四個体ほど実際に見たことがあります(写真だけならもっと見ています)。国内に来ているのはもう少し多いかもしれません。
ただ、大量捕獲の中から色彩変異を見付け出す、というような発掘の仕方が出来なくなった分だけ、こうした色彩変異は見つかりづらくなっているのは確かで、実際、此処数年は野で捕獲された個体が流通することは稀になっています。捕獲圧云々以前に、そもそも自然破壊が深刻で、捕獲しようにも生息している自然が無くなっているそうなので(現地を訪れた人談)、存在するけれども見つからないというよりも、自然下にもう居なくなりつつあるというのが正確なところかもしれません。
CB化は、今の処まだされていないと思われます。
▽Elaphe c. carinata var. Axanthic(Anerythristic?)/アザンティック(アネリスリスティック)
黄色色素欠損、もしくはアネリスリスティックの名前で来るもの。過去にこの名前で来るWCで実見したものもありますが、瞳の色まで変化しているものはありませんでした(それにサイズも小さかった)。ただ、瞳の色まで変化するものは、写真では数点見たことがあります。
固定された云々の話は、噂だけは幾つかあり、米国のブリーダーが飼育しており、ヘテロを採る処までは行ったとか、欧州では既に固定されているという話を聞きました。過去、ヘテロのオファーがあったことはあるので、固定されているのかな、という気はしていますが、どうなのか………。
2013年には、これはアネリスリスティックだろう………というWC個体が輸入されて国内で流通したのは記憶に新しいところです。管理人は国内CBでヘテロが出てくることを願う今日この頃です?
他の変異と掛け合わせる事で、色々と面白くなりそう………と思う以前に、単純に、この変異それだけで中々に趣きがあるのではないか、と思っているのですが、ある意味白黒な蛇なわけで、そう思うようになっていたら、あなたも結構感覚がズレて来ているので注意が必要です(苦笑)
▽Elaphe c. carinata var. Leucistic/リューシスティック
var. Leucistic
白皙に檸檬色が映えるリューシスティック。写真は成体。亜成体の頃は淡いレモンイエローだが、成体になるに連れ黄色が強くなる。元となったタイプにより、成体の黄色には差が生じてくると思われる。瞳に赤を欠く。
タイリクシュウダのLeucisticは、模様が全身から消失し、透き通る白の上に水彩調の檸檬色を塗り広げたような、大変美しい変異です。
体表面の黄色は、普通のシュウダがそうであるように、成長と共に色合いが増して行くので、亜成体の頃は淡い檸檬色になり、個人的にはこの頃の色合いが一番好きだったりします。黄色みの薄い個体群でこれを繁殖させれば、成蛇になっても淡い色彩のものが出来るのでは、と考えていたりします。まぁ、固定できてからの話なので、先のことでしょうが。
この黄色の色合いは、ベースとなった個体の黄色の量に影響されるのだろうと推察されます。実際、頭部では黄色が強く、下半身になるとレモンイエローという、グラデーションが楽しめるので、組み合わせるタイプによって作り込みが楽しめるのではないかと思います。
随分昔の熱帯魚雑誌(なんだったか忘れました。切り抜きで知り合いに貰ったので……フィッシュマガジン?)の香港特集に写真が出ていたこともあります。いままでに数個体存在したようです。
一見すると体表面に黒色色素胞がないようにも見えますが、頭から背骨に沿って、鱗と鱗の隙間に黒い部分が点在します。少なくとも黒色色素が欠損している訳ではないのは、この黒い部分と、瞳から黒色色素が欠落していないことから明らかでしょう。むしろ、瞳を見たときに興味深いのは、、黒い瞳となっていることではないかと思います。
魅力的な変異ではありますが、未だ固定されたという話は聞きません。過去にもう二個体ほど、日本に入って来ていると聞いています。どこにいるんだろう………。
アザンティックと組み合わせれば、白磁のようなしっとりとした風合いのヘビにすることが出来るでしょうし、ベースとなるシュウダの黄色の面積によって表面に乗る黄色の量を調節することも出来るでしょうから、選抜交配などにより、思い思い好みの黄色に染めることが出来るやもしれません。そうなれば、なかなかに固定し甲斐のある変異だと思うのですが………。
余談ですが、瞳の色が均一なパープルアイになるリューシスティックが近年見つかったようです。リューシスティックというか、あれはいわゆるブラックバックのようなものなのかな。
▽Elaphe c. carinata var. Hypomelanistic/ハイポメラニスティック
var. Hypomelanistic おそらく最初に固定されたハイポメラニスティック。体色の抜け具合は、ラベンダーアルビノに酷似しているが、瞳は透明ではない。
シュウダにハイポが幾つあるのかは、定かではありません。個人的には、今まで写真で見たハイポの個体からすると、少なくとも三乃至四種類はあるような気がするのですが、此のあたりは検証しないと確たることは云えないですからね………。
少なくとも、ここで紹介しているハイポのうち二つは、複数見つかっているようです。
他のHypomelanisticがそうであるように、黒色色素の減衰だけでなく、黄色色素の増加があるようで、特に黄色の増幅が見受けらるような気がします。まぁ気のせいかもしれませんが、今の処オスのほうが綺麗かな、と。
右上のものは、アメリカで何年か前に(うろ覚えでは2005あたりだったかと思いますが………)固定されましたが、此が過去国内に輸入されたHypomelanisticと互換性のあるものであるかは定かではありません。管理人のところでは、これと同じものであろうと思われるものを繁殖させていますが、これは全く別のWC個体に由来するものです。アメリカのそれと交配して検証してみないと確かなことは言えないとは思いますが、まぁ何となく同じものであるような気がします。誰かが検証してくれるのを期待(←なんというやる気のなさ)。
ただ、ちょっとアメリカのものは黄色の色調がやや弱い外見をしていた記憶があるのですが………。とはいえ、そのあたりは元となった個体の地肌の色合いが違うだけという公算が高いような気がするので、まぁ確かなことはやっぱり、交配させてみるしかないでしょう。
余談ですが、このハイポは、何故か瞳の中の黒色色素の量が、ノーマル個体よりも強くなっているような印象があって、瞳の色が葡萄目とは違うのですが、より紫っぽいという印象があります。暗紫色っていうのかな………。幼蛇の段階ではそんなこともないので、成長に従ってそうなるみたいです。
ところで、このハイポメラニスティックの名前ですが、当サイトでは、この変異に関しては今後は単純に「ハイポメラニスティック」と表記します。理由は幾つかありますが、先に述べたように、海外で同じ遺伝子だと思われるものが既に固定されており、それの名称が単に「ハイポメラニスティック」となっているというのが最たる理由です。名前は、固定した人間が使っている呼称に倣うべきだと思っているので。
var. Hypomelanistic - Purple Hypo-
炯々と輝く赤眼が美しい。対して体の黒色色素の抜け具合は弱く、紫色を帯びているかのように見える。 Hypomelanisticであるならば、黒色色素が減衰はするものの、模様となる黒の部分がそのまま残るようなもの(殆ど上位互換みたいな外見のもの)があっても良さそうな気がしなくもないのですが、今の処そういったものは知られていないようです。もっとも、ハイイエローといった名前で流通しているものの中に、そんなものが混じっていた可能性はあるのではないかな、という気がしますが。このあたりは脱皮殻などを見ることで、判別はできないまでもあたりが着けられるかもしれないので、そうやって調べていってみても面白いかもしれません。(←これを面白いと感じられるようになった人は愈々末期です。注意しましょう)
上の写真はまた別のHypomelanisticと思われる個体。実際にそうかは今後の検証待ちです。このタイプは管理人が知る範囲でも四個体は存在していました。ただ、額板が欠損、或いは形状に異常を持つ個体がそれぞれ一個体でした、。写真の個体は正常ですが、額板の欠損と変異に因果関係はない……か、どうかは殖やしてみないと何とも言えません。まぁ無いと良いなぁと思う今日この頃です(可能性の話ですが、外見上酷似していても、別の遺伝変異で、片方は額板欠損が起こりやすく、もう一方は起こりづらいという事はあり得ます。アルビノでそれっぽい事例があるようなので……)。
このタイプのハイポメラニスティックは、もともと黒の部分がごくごくわずかに色抜けし、紫暗色というような色合いになっています。どういう名前にするか悩んでいたのですが、管理人はこれをHypomelanistic "Purple"あるは転じて"Purple Hypo"とと呼ぶことにしました。なんで勝手に呼ぶことにしちゃったかというと、まぁヘテロがいるので、将来的に固定できそうな気がすること、それから、既に固定されているもの(上に書いた、アメリカで最初に固定されたと思われるもの)と、互換性がない新しいものであると思っているからです。
外見から、ちょっとラベンダーという単語が連想されたので、以前はここでもラベンダーハイポかなぁとか書いてたのですが、将来的にコーンスネークで言うところのラベンダーのような色彩変異がシュウダで発見されるのではないか、というのがずっと引っ掛かっていて、それが見つかった時、それをラベンダーと呼べないのは困るなぁと思ったので(こういうのを取らぬ狸の皮算用といいます)、ずっともっとしっくり来るものはないか考えていたのです(あと、ラベンダーアルビノとの区別がつきにくいので………)。まぁ、あれです、こういうのはちゃんと固定してから書けよ、という話ですね!(まったくだ)
あと、海外のサイトで違うタイプかな、というようなHypomelanisticを二種類ほど見掛けましたが、これらが固定されたのかどうかは分かりません。取り組んでいるようなので、期待したいところです。
他の品種との組み合わせが気になるところですが、今の処、組み合わせて面白そうなのは、ダブルのハイポでどこまで黒を消せるか、ストライプ×ハイポでグラデーションを作れるか、リューシスティック×ラベンダーハイポでレモンライムイエローの発色を作れるか、ストライプ×ハイイエローで虎柄のものを作れるか、といったところでしょうか。あとは選抜交配で……リューシスティック×黒い面積が多いタイプで、リューシスティックをどこまで白くできるか、とか。黄色を消す方向で考えるなら、アザンティックが居れば、さらにバリエーションが広がると思うのですが………真実にアザンってのは、昔いたらしいのですけれど、管理人は見たことないんですよね………
▽Elaphe c. carinata var. Striped Pattern/ストライプ
ストライプ。ストライプは写真を含めると数個体見たが……。
遺伝性は、どうやら劣性遺伝という話です。しかし、なんでこんなに頻繁に見つかるんでしょうかね? どこかではやたら出るとか、そういうところがあるという話も聞かないのですが……よく分かりませんですね。何れにせよ、遺伝性があるとすれば、他との組み合わせで、かなり色々な楽しみ方ができる面白い変異だと思います。選抜交配した上でストライプ化というのも出来ますから、組み合わせはかなり多岐に亘るのではないかと。
ところで、此奴らって、幼蛇の段階で分かるんでしょうか………遺伝するとは思っていますが、そうだとしても、それが一番の問題と言えるでしょう。背中の模様は、幼蛇の段階でもバンドのように入るので、そこが乱れているかどうかで、判断できると思うのですが………。
このあたりも、まぁ殖やしてみれば分かるだろう、ということで……十年後ぐらいに追記するのではないかなぁ(笑)
■写真集/Photo Galley■(>>menu)
気付けば色変ばかりという写真集。黒が魅力的とか上で書いているくせに、ちゃんと黒い個体の写真が殆ど無いって言うはどういうことなの?