幼蛇。 帯模様は八ヶ月前後で薄くなり始め、飼育下では一年前後で成蛇と同じ模様になるようだ。変化に雌雄差があるかは、まだ分からない。
▽Oreocryptophis porphyraceus pulchra (Schmidt, 1925)
Coluber porphyraceus pulchra (Schmidt, 1925)
Elaphe porphyracea pulchra (Schmidt, 1925)
中華人民共和国は雲南省に棲息するということで、生息地名シリーズで言うならば、ユンナンベニナメラと呼ばれることとなるでしょう。英語読みです。雲南省は日本語の読み方だとウンナンですけどね。
ヒマラヤ山脈の方まで棲息しているようですが、インド側になると基亜種になるようなので、チベットのあたりまでと考えるべきなのか……なんかの本に書いてあったような気もするのですが、中文だったのであまり読んでいないのですよね……(苦笑)
ちなみに、雲南省だけではなく、その東方に位置する貴州省、北方の四川省、四川省の北方に接する甘粛省と陝西省にも棲息分布が示されています(この名前を聞いただけで、地図上でどのあたりを示すのかぱっと思い浮かんだ方は、かなりオカシイです。レベルとしては○○スタンの国が四つ以上ぱっと思い浮かんだ上に、位置関係が地図で示せるぐらいに)。
四川省には有名な臥竜自然保護区があります。ジャイアントパンダの生息地として有名な四川省……パンダ……笹………竹林!?
ということで、おお、そうか、この種こそが、"Bamboo Ratsnake"なのか!とか思ってみると面白いんじゃないですかね?(いや、実際に竹林にいるかどうかは知りませんが……)。 標高は実に1000-2600mという高地にまで棲息しているそうです。
本種のCBが最初に誕生したのがいつなのか、正確なところは管理人は知り得ていません。2006年以降、欧州では毎年コンスタントに繁殖例があるようで、中国本土でも前後から繁殖例が聞かれるようになりました(もっと前から成功してたのが、聞こえるようになったのがこの頃というだけなのでは、という気もしますけれど)。それ以前では、慥か、2003年には欧州で孵化数日後の写真が出回っていたのを覚えています。
日本に最初に輸入されたのが何年かは分かりません。2005年には来ていましたが、此のあたりに入れ込んでいる人の狂気の嵩は青天井ですから、それより以前に国内に来ていたとしても、あまり不思議ではないかな、という気はします。
2007年には、米国で販売されていましたが、あれは欧州で増やされたものが輸入されたと聞いています。リバーストリオで4500ドルとかでした。このあたりは流通量が少ない頃のベニナメラにありがちな価格なので(laticinctusもUSで最初に表だって販売されたときはペアで4800ドルとかでしたからね)、繁殖が軌道に乗れば……そうですね、2011年か、2012年頃には、もう少しメジャになっているのではないかな、という気がします。
そうしたどうでも良い過去エピソードはさておき、此の亜種に関する何らかの情報を上げていきたい………ところなんですが、あまり、詳しくこの亜種のことは知らないんですよね。
場所が場所だけに行くのもちょっと厳しいし………うーん、雲南省は、一度は行ってみたい場所ではあるんですけれど。
WCを入手して見た感じ、性質や飼い易さなんかは、laticinctus亜種とvaillanti亜種の中間に位置しそうだな、という印象です。あるいは基亜種(porphyraceus)との中間なのか。基亜種は見たことがないので分かりませんが。このあたりは、近年流通がかなり改善され、状態の良い物が流通するルートで来ている事も大きいのでしょう。生息地から考えて、本亜種がvaillanti亜種より飼い易いヘビだとは、ちょっと思えませんからね……流通が悪ければ、もう無理なレベルだと思われます。
外見もまた、東南アジアのものよりも、タイリクのベニナメラっぽく、端的に言ってしまえば、CBは美しいが、状態の悪いWCはもの凄い微妙、状態よくなってもCBには遠く及ばず、やっぱりかなり微妙、かと。状態が悪くなったときの質感は、正しくタイリク系という印象です。実際に遺伝子的にどちらに近いかは知りませんが。まぁ、このあたりは最後のほうに出している写真を見れば一目瞭然でありましょう……(苦笑)
正直なところ、WCは、あまり飼いやすい蛇ではないと思います。慣れないうちは、辞めておくのが無難です。流通さえ良ければ、ある程度は行けるでしょうが、そのあたりが分からなければ籤的要素が濃いでしょう。加えて云うと、大陸のベニナメラのように、WCは外見が茶色い微妙な色合いになってしまいます。二年ぐらい飼い込んでも、これは改善されないので、諦めるべきなのでしょうね。
幼蛇から八ヶ月ぐらい経過すると斑紋内部が色抜けして行き、一年前後で抜けきります。このあたりで、模様や色合いは、ほぼ成蛇と同じになるようです。成体は、紅や赤よりは、朱と云う表現が近しいでしょう。もっとも、朱というとちょっと明るすぎる感もあるので、柔らかみのある、緋と朱の中間あたりの色というべきかもしれません。いずれにせよ、ベニナメラの名に相応しい、最も美しい朱赤紅緋のヘビの一つでしょう。(註:管理人はベニナメラに惚れに惚れ込んでいるので、あまり評価がだいぶ歪んでいます。スルーしてやってください)
ところで、どうも、ユンナンベニナメラには斑紋の幅で二つのタイプがあるようです。最初は雌雄差なのではないかと思っていたのですが、そうでもないようなので、個体差の範疇なのかもしれません。一つは斑紋が小さく狭く、成体になっても黒いまま、というもので、もう一つはタイリクベニナメラと同じぐらいの幅の斑紋で、成体になると斑紋内部の黒は残るもののかなり薄く、一見するとlaticinctus亜種に近いような外見になってしまうものです。鱗とかはまだ数えていませんが、どうも欧州のほうでも別段、これらを区別していないようなので、やはり個体差なのか………鱗を数えてみようかな、と思ったまま、もう二年は経ったような?
個人的には前者のほうが好きなんですよね。どうも、昔から見ていたユンナンベニナメラの写真といえば、こちらだったので………。
■ 飼育 ■
CBの飼育に就いて。CBであれば、ベニナメラとしては、タイリクベニナメラ亜種などよりは容易であるように感じます。かといって、ナミヘビ全体から見た場合、容易なヘビとは言い難い処があります。何故かというと、本亜種が好む環境が、湿潤と乾燥の中間的な環境であるからです。
飼育するに当たっては、土の管理に精通しないまでも、土でヘビを飼育した経験があることが望ましいでしょう。というか、最初に飼育するベニナメラとして本亜種を選ぶのは辞めておくのが賢明である気がします。そんな人がいるのかどうか、分かりかねますが、もしも他のヘビを飼育した経験はあまりないけれど、この亜種がどうしようもなく好きだ!という人がもしいたら、気持ちは分かりますが、一年ぐらいはベニナメラでなかったとしても、多湿系の地上棲ナメラの飼育を一つぐらいは経験した上で手を出すのが安全だと思います――具体的に例を述べるならば、CBの他亜種のベニナメラ、タカサゴナメラ、ジムグリ、スジオナメラ、シマヘビ、アオダイショウといったヘビの飼育を、どれか一つぐらいは経験していることが望ましいでしょう。と、言ったところで、まぁ、こんなヘビをわざわざ飼育しようという数寄者であれば、これらのヘビのどれかを飼育したことがあるかと思いますが。
こういったヘビの飼育で必要不可欠なのは温度と湿度のコントロールであることは当然ですが、温度は結局のところ空調に頼り切るわけで、何か特別な技術が必要な訳ではありません。もっとも、空調は設定通りの温度になるわけではないので、ケースを設置する場所が、外気温や日当たりでどのように変化するのかを調べておく必要はあるでしょうが、此のあたりは技術とは呼べないでしょう。強いて言うなら、観察と技術の必要性が出てくるのは、湿度調節の部分かもしれません。
どういった環境を好むのか、現在の状況ではどのぐらいの湿度環境を欲しているのかを見極める観察眼と、その判断に沿う湿度変化を飼育ケース内部にどうやれば与える事が出来るのかという経験に基づく知識、そして過不足なく実行できる技術。一見、大した事でもなく、実際、大した事でもないのですが、しかし、実際にやれるかどうか、となると、簡単ではないようです。おそらく、これを簡単にするものが、才能か、或いは経験というものなのでしょう。管理人はひたすらに経験を積んだタイプです。
だから、いろいろ経験積んでみてください。一応、手引きっぽいものは此処に書いてあるので、かなり軽減される筈です。
本亜種がどういった環境が好きなのか――というと、乾燥が好きなのか、湿潤が好きなのか、かなり微妙なところで判断がつきかねます。現時点で好みを十全に把握している自信はありません。取り敢えず、観察してこうかな、と思ったところを並べておきます。
土によく潜りますが、観察してみると湿度の高いところや深いところには、それほど好んで潜りません。一時的に潜ることはありますが、滞在する場所、自分の住処とする場所は、湿度のあるところより少し乾燥したぐらい――地肌に触れる部分は、乾燥しているわけではないが仄かに水分を持ち、そのさらに下層には湿潤な環境がある、というような、空中湿度が豊富な場所、という印象です。
おそらくは、休む時は皮膚に触れるところは、乾燥しているか、極々軽く湿っているが、その下の層は湿り気を帯びているようなところを好み、活動時間には湿り気を帯びたところから、一時的に乾燥したようなところ――常に乾燥しているのではなく、一日のうち一定の間乾燥しているようなところ――まで幅広く徘徊しているのではないかと推察されます。
また、好む場所にも水分以外にもどんな素材か、というのも多少あるようで、例えば、水苔とかには好んで潜ったりしません。他に潜るところがなければ致し方なく潜る、という感じであり、基本は土のほうが好きなようです。椰子殻土、腐葉土などがよいでしょう。
そういったヘビなので、乾燥気味で飼えるかというと、それは避けるべきでしょう。個体に与える負荷は決して少なく見積もれるものではなく、それはCBであっても致命的なものとなると思います。加えるなら、乾燥環境では温度設定がシビアになりすぎます。
ですので、広めのケースで床材を数センチ敷き、床材の底面は多湿、表面はやや乾燥、水入れ周辺は濡れている、というようにするとよいかもしれません。つまり、水入れを介して注水し、その周辺及びケース底面は軽く濡れていて(ぎゅっと握って水が零れず、しかし手には湿り気を感じるぐらいでしょうか)、表面は水分を帯びてはいるが乾燥に限りなく近いという塩梅です。蛇自身がぐるぐると床材の中にトンネルを造るので、それが空気口として働きますので、土が悪化することはないでしょう。ですが、あまりに深くするとそういう可能性もありますので、4-5cmぐらいが無難というところでしょうか。もし、そうしたトンネルの制作が上手く行っていないようならば、用土が柔らかすぎる(作っても崩れてしまう)か、硬すぎる(そもそも掘れない)のどちらかなので、混ぜ込む用土の塩梅を変えてみるとよいでしょう。オススメの用土は、椰子殻土や、腐葉土を混ぜたものですが、そのどちらか単体でも個体の調子が崩れないならば問題ないはずです。
主な活動時間は他のベニナメラがそうであるように夜間です。隠れる性質があるのでシェルターは必須であり、園芸用の植木鉢に使う皿をひっくりかえし一部をカットしたシェルターを設置すると、そこに入って落ち着きます。管理人は(株)スドーのウェットシェルターを使用していますが(だって加工とか面倒なので)。
基本、潜る蛇ですが、潜るのは活動時間にそうした行動をとる、というだけであって、休息時間に潜む場所として地下は選択されていません。シェルターを入れないと潜りっぱなしになりますが、シェルターを入れるとほぼ間違いなくそこに陣取るところを見ると、自然下でも岩の下や倒木の下といった場所を塒として選択していると思われるので、何らかのシェルターは必須でしょう。
また、このシェルターにはもう一つ、乾燥した場所を提供する、という意味があります。活動時間中には、乾燥した陶器製シェルターやコルクバーグの上で休む姿がたまに見受けられます。また、床材に水を加えすぎてしまった場合なども、こうした乾燥した場所の上に待避することでやり過ごすようです。
CBであっても、かなりストレスに弱いと思われ、好みの環境を用意してやらないと、あっさり状態を崩したりしますから、次善の策として、様々な選択肢を網羅しておくことが長期飼育に際しては重要になってくるでしょう。ただ、丈夫な個体は結構(laticinctus亜種と同じぐらい)丈夫なので、もう少しCBの代が進めば、飼い易い個体が多くなってくるような気がしなくもないです。
ただ、本亜種の好む環境を把握するまでは一苦労ですが、それを把握し、最適な環境を与えておけば、餌付きもよいようですから、極端に難しいということもないでしょう。WCと比べれば、CBはまだ飼えるヘビです。
選好温度はよく分かりません。取り敢えず、23-26℃ぐらいで生きています。おそらく好みの温度は23-24℃前後で、夜間21℃ぐらいは余裕でしょう。こう書くと、温度再現が厳しいと思われるかもしれませんが、だいたい気温が26℃の時、程良い湿度で通気性のよいケースの地温は23℃ぐらいになりますから、再現はそんなに難しくはなかったりします。室温が28℃ぐらいでも、ケースを腰より低い位置に置いて扇風機を回しておけば余裕でしょう。
もともとベニナメラの中でもかなり標高の高いところに棲息している亜種ですから、高温には曝さないのが無難である気がします。下限や上限がどこかは調べていないので分かりませんが(そして調べる予定もありません……)。予想としては、CBであればもう少し高い温度でも平気なのでは、という気がしますが………ただ、確かめる気はしないですね。
餌食いは、ベニナメラの中ではかなり良いほうです。CBのベニナメラとしては、laticinctus亜種やcoxi亜種に次ぐぐらい食いは良いかもしれません。環境さえ用意してやれば、食いの部分ではそれほど苦慮しないでしょう。置き餌でも食べますが、ピンセットに食いついて食べるぐらいです。あ、余談ですがWCは食べません。なんですかあの食べなさ。
■ 繁殖/breeding ■
書ける目途とかそういうものは一向に立ってませんね……。
Oreocryptophis porphyraceus pulchra WC?2005 | Oreocryptophis porphyraceus pulchra CB2007male | ||||
2005.7.12 | 2005.7.12 | 2007.12.23 | 2008.2.22 | 2008.5.26 |
Oreocryptophis porphyraceus pulchra CB2007 female | |||||
Oreocryptophis porphyraceus pulchra WC | |||||
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Oreocryptophis porphyraceus pulchra (CB2007) | |||||
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Oreocryptophis porphyraceus pulchra | |||||
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Oreocryptophis porphyraceus pulchra | |||||
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