餌図鑑/Pet's food picture book

Wax moss/ハニーワーム


ハニーワーム。左下のものは、メスの終令幼虫
 ハニーワームと呼ばれている餌昆虫は、柔らかく脂肪分に富んでいるので、産後の肥立ちなど、重点的に太らせたい個体に与えるのに向いていますが、栄養に富んでいるぶんだけ、消化するのには体力が必要であるようです。人間であっても高カロリーのものはいくら栄養があっても病み上がりの体には向かないように、初期立ち上げに向いているかについては一考の余地があるかと思います。健康な個体に限っていればちゃんと消化してくれるので、積極的に与えたいところですが、滋養がありすぎるので、食べさせすぎることによる肥満には注意しましょう。

 ハニーワーム自体は、甘い餌に混ぜると、比較的なんでも食べてしまうので、ローディングすることで、飼育動物にストレスなく目的の成分を摂取させることが出来るという点で、とても利便性の高い餌昆虫でもあります。

  ハニーワームというと、「ブドウムシのことか?」と思われる釣り好きの方もいらっしゃるでしょう。それは以前であれば正しく、また現在であれば正しいとは限りません。釣りで古くから使われていた「ブドウムシ」は、ブドウの幹の中に棲む、ブドウスカシバというアシナガバチに擬態する蛾の老成幼虫でした。 日本では北海道から本州、九州まで、海外では中国大陸にまで分布し、ブドウの他にヤマブドウ、エズビル、ノブドウなどにも寄生し、ブドウ栽培を手掛ける農家にとっては頭の痛い主要害虫であるこの虫の、老成幼虫が「ブドウムシ」の名で、釣具店などでかつて販売されていました。此を餌昆虫として利用された方も少なくなかった様で、実際汎用性の高い餌だったそうですが、養殖が利くようなものでもなかったので、餌として消費するには高価でした。

 そこに登場したのが、大量に養殖出来る代用品であるハチミツガの幼虫です。これが、「養殖ブドウムシ(ハニーワーム)」として、販売され始めたのだそうです。この虫は学名をGalleria mollonellaといい、長らくハチミツガと呼ばれていましたが(註1)、最近はミツバチ研究の場で使われていたハチノスツヅリハチノスツヅリガ/蜂巣綴蛾の名を使うのが主流であるようです。ツヅリガ、とは、綴る蛾、であり、その名は、単純に穀物を食害するだけでなく、その周囲にある食品を綴り、巣を形成し、その中で羽化する習性に由来しています。螟蛾(メイガ)科に属し、ハチノスツヅリガ以外にも、ガイマイツヅリガ等が知られ、どれもが食害昆虫に指定されていたりします。まぁ、指定されているからといって、飼育云々を書いているだけのこのページでは何が変わるという訳でもないのですが、なんでもないこともページの余白を埋める為に書いてみただけです。

 (註1:過去の文献を検索するときは、ハチミツガのほうがヒットするということです。)

 ただ、ハチノスツヅリガは、ミツバチの巣に侵入し、そこの餌を食べて巣をダメにしてしまうというその性質から、養蜂家にとっては迚も頭の痛い存在です。日本で飼育されているニホンミツバチ、セイヨウミツバチの巣に寄生する蛾は、大型種であるハチノスツヅリガ、小型種としてコハチノスツヅリガとウスグロツヅリガの、計三種知られているそうですが、いずれも、巣に住みつく事から、スムシ(巣虫)と呼ばれているようです。最終的にミツバチが巣を放棄せざるを得ない状況にまで追いやることすらあるという話ですから、養蜂家には心底迷惑な存在ではありますが、飼育の分野では有用な餌昆虫として、とくに欧米では盛んに養殖され、一般的な餌として広く普及しているそうです。

 日本でも餌昆虫としては、もう十余年近く流通していますから、馴染んで来ているのではないでしょうか。とはいえ、繰り返しになりますが、養蜂家にはこれ以上ないぐらい迷惑なので、飼育する場合は脱走に厳重に注意しましょう。お隣さんが養蜂家な場合は洒落になりませんですよ。と、言うか、そもそも、家の中だと色々囓られてしまいますし。管理人の所では未確認ですが、衣類を食べるという話も耳にします(少なくとも囓ります)。

 成虫のサイズは約2cm、幼虫は最大2.5cm程度。餌は、その名の通りハチミツを主体にした餌をよく食べ、自然、幼虫は高脂肪なのだそうですが、体力を消費している個体への滋養強壮に適しており、見た目や色、動きからも食欲をそそるらしく、多くの爬虫類、両棲類ともに、食いがよいです。但し、体力が落ちているというよりも、衰弱していて、消化機能まで弱ってきているような個体には与えない方がよいのでは、という意見も挙げられています。理由は吐き戻しと消化不良が起こった事例が知られているからで、消化するのに、それなりに健康な状態であることが求められるのではないかと言われています。この事例にしても、コオロギなら消化不良に成らなかったのか、等のデータ部分は不足しており信頼性の程は分かりませんが、確かに人間でも、不調の際には脂肪分を含まない淡泊な食品を好む傾向がありますし、高脂肪食はそれ自体が消化力を要しますから、病気の個体には向かないという意見は、実証はされていないとしても、一理あります。

 ミルワームを食べる類の生き物なら、まず食べますが、頑なに食べない種がいるのも事実です。逆にやたらよく食べる種類も多く、特に樹上棲ヤモリや小型の地表棲ヤモリの孵化仔には、ピンヘッドのコオロギには興味をあまり示さないが、これは食べる、というものが少なからず居ます。具体的にはLygodactylusEurydactylodesGonatodesのベビーなどがそうです(EurydactylodesGonatodesは、まだピンヘッドや一令のローチにも興味を示す傾向はありますが)。他にも幅広い種類の動物がよく食べますが、Uroplatus/ヘラオヤモリやGoniurosaurus/キョクトウトカゲモドキなど、夜行性の種では、夜間にそっと与えても、動きを目にしても、興味を示さないようでした。

 成長速度は温度に大きく依存し、30℃ほどで飼育すると、初令幼虫から二週間ほどで終令幼虫にまでなります。蛹は数日後に羽化し、交尾し、暗い場所に数百個の卵を産み付けるようです。つまり、短期間での大量繁殖が可能です。また、蛾の中でも高密度で飼育しても共食いなどを起こしません(卵を周辺のエサと一緒に食べてしまうようなことはあるとは思いますが、小さい幼虫を大きい幼虫が食べるということは、ないと思います)。このあたりが餌昆虫として重宝されている理由でしょうか。
 飼育繁殖が容易な昆虫の中で、成虫が餌になり、かつ飛翔する、という餌昆虫はあまりいません(他にも繁殖可能な蛾は幾つか存在しますが、大量繁殖するにあたっては、病気に気を付けるといった注意が欠かせません)。この飛翔するというのはマイナスであるという考えもありますが、その飛翔能力は大したことが無いので、逆に、その動きが刺激になって餌付けに有用という場面も出てくると思うので、ちょっとぐらい飛ぶのもアリではないかな、と思います。

 温度に成長が依存するということは、すなわち低温では成長が鈍化するという事でもあります。幼虫は、10℃~15℃では殆ど動かなくなり成長が停滞しますので、限界はありますが冷涼環境に置くことで、長期に渡るストックも可能です。

 常にすべてのサイズを用意するというのは難しいのですが、サイクルに任せて維持し続けるだけであれば飼育や累代繁殖は簡単です。サイクルも短いので、飼育容器が三個ぐらいあれば、常時ある程度のサイズをキープできるでしょう。むしろ、爆発的に殖えてしまうので、数をいかに抑制するか、制御するかのほうが難しいかもしれません。一応我流ではありますが、飼育方法を後述します。


ハニーワームの餌になる材料。左奥から蜂蜜、グリセリン、ビール酵母、コーンミール、フスマ

■ハニーワーム養殖用培地・本格的かもしれない版■

 ハニーワームを系統維持するだけならば、此処にあるような培地を作る必要はありません。もっと安価なものは簡単に作れます。此処にあるのは、餌昆虫となる、栄養のあるハニーワームを効率よく殖やすのに向いてあるであろう餌です。

 ベースは、蜂蜜と穀物粉末です。これに栄養を補う素材を加えていきます。ただ、高温環境に置く場合、材料によってはコダナニが発生する要因になるので、バランスが難しいです。例えば、海外の洋書などでは、粉ミルクを入れる例が出ていますが、冬はともかく夏場に湿度の高い日本では、コナダニがやたらと発生しやすくなるので、ローディング用の餌としてならばともかく、育成用の餌としてはオススメしかねます。

 ただ、粉ミルクや蜂蜜で甘みを出した餌に粉末にして混ぜ込んでおけば、ハニーワームは何でも気にせず食べてしまうようなので、各種の生き物用や、育成用、産後の肥育用など、色々な種類を作ってみるのも面白いでしょう。工夫を凝らしつつ、それ自体を楽しんでみてください。

 さて、材料について、つらつらと。


蜂蜜500gとグリセリン500ml。蜂蜜は容積で言うなら350ml程度だろうか。メーカはお好みで。

 蜂蜜(500g):安価なものでかまいません。もちろん、高いものでもかまいませんが。加えていうと、蜂蜜ではなくメイプルシロップや、単にシロップ(糖蜜)で餌を作っている人もいるそうです。

  ハチノスツヅリガは蜜蝋に湧くことが知られていますが、別段それを好んで食べるという程ではないので、入れる必要はありません。

 グリセリンは、蜂蜜を割って薄めるためのものです。水を加えると餌は発酵して大変なことになるので、ハニーワームの餌には水を使いません。そのため、蜂蜜を割り増しする材料として、グリセリンを使います。グリセリンは薬局などで売られている透明のとろみのある液体で、仄かに甘いそうですが管理人は嘗めたことがありません。油脂を加水分解して作られるもので、石油から作られる合成グリセリンなどもありますが、これは工業用で、薬局などで売られている医療用途のグリセリンは、植物性グリセリンになります。これは、椰子などの植物油脂を加水分解し、濃縮、精製して作られている、ひじょーに反エコロジーな産物です。


左から、乾燥ビール酵母、コーンミール、フスマ

 続いて、餌の材料となる粉は、フスマ、コーンミール、フスマの三つ。
 フスマ(500~750~1000g)は、小麦を挽き潰し小麦粉に精製する過程で出てくる、殻のことです。あんまり売ってない気がしますな……買う場合は、通常10kg一袋とかで買わねばならない上に送料が必要になったりして、結構割高になってしまったり……入手方法によって値段が大きく変動する代物ですが、ミルワームの維持にも使えたりしてそこそこ便利ではあります。
 無い場合はケーキ材料売り場に全粒粉、或いは全挽粉という名前のものが売られているので、それでも良いかと思います。

 コーンミール(500g)もまた、ケーキ材料売り場(製菓素材売り場)で、ケーキやコーンブレッドの素材として売ってます。卸値だと安く入手することもできますが、キロ単位で購入することになります。製菓素材としてネットで売られているので、フスマや砂糖なんかと一緒に購入するといいかもしれません。

 餌の制作方法はいたってシンプルです。順を追って製作して行きましょう。
 先ず、蜂蜜を湯煎で融かします。グリセリンと同じぐらいの粘度にしましょう。熱湯でぐつぐつやっても何ら問題はないです。あ、但し、水が混ざり込まない様に注意。

 大きい容器と、ヘラ(或いは大きいスプーン)を用意し、綺麗に洗い、熱湯消毒しておきます。
 そこに、コーンミール、フスマ、ビール酵母を(あとはピーナッツの粉末であるとかお好みのものを)入れて、均一になる迄よく混ぜておきます。
 フスマは、量を多く割り増しする為のものな感じなので、500gぐらい先に入れておき、後から調整する感じが良いかもしれません。上記の蜂蜜はグリセリンの量の場合、フスマを1000gぐらい入れて作るとぱらっとした餌に仕上がります。それなりに大きい幼虫ならこれで良いですが、産卵させて、あるいは卵を入れて、初令の幼虫から育成する時に使う餌を作るなら、750gぐらいのフスマで作るのがよいでしょう。

 粉をよく混ぜたら、中央を凹ませる感じに慣らし、其処に湯煎で融かしたハチミツとグリセリンを注ぎ入れます。そして、凹みの中で、ハチミツとグリセリンを静かに混ぜます。

 混ざったら、後は一生懸命練ります。練り練り練り練りと。ヘラは丈夫なものだと幸せです。やわいと遣りにくいのです。がっかりです。
 ヘラで練り込み、味噌みたいな具合になったら完成です。ベタ~という感じではなく、程良く粘体(流動体と言うのか?)と固体の中間から、やや固体よりぐらい。粘土の気持ち?

 フスマの量が1000gに近いほど、ぱらぱら感が出てきます。1000gでは、「……なんかやたらぱさぱさっぽい……?」と思うものが出来ると思いますが、問題はありません。初令のときはフスマを少なめのほうがと書きましたが、別にこれを使っても、幼虫の小さいころはしっとりしたところいて、成長するとぱさっとした部分を食べていくので、案外問題なかったりします。

 この餌は、冷蔵しておけば、加えた材料や作った環境(清潔さの度合い)にも因るでしょうが、数ヶ月は軽く保つみたいなので、多少多めに作っても気にしないでよいでしょう。冬場は良いですが、夏場も常温で放置しておくと、使用する段になって発酵してしまうリスクが無用に上がるので、冷蔵するのが無難でしょう。

  現時点で確実に分かる、この培地の最大の欠点……というか、問題点は、実は価格です。
 この餌は、結構コストが掛かるのです。なんて言うか、材料集めるのに結構お金掛かったなぁ、じゃ、作るか……と言うことで作っても、あんまり大量に出来ないんです。フスマを1000g以上に水増ししても、せいぜい3.5~4リットルという所でしょうか(圧縮の度合いにも依りますが)。
 1000匹、2000匹、と育成しようと思った場合、どれ程の餌が必要なのか? 統計取ってないのですが……どうかなぁ。まぁ、ハエの培地よか安い……かな? という気がします。但し、育成するには更なる手間の嵐だったりしますが……

 だいたい、3000円~5000円ぐらい掛かると思います。努力次第では、ここに書いたよりも、もっと安く出来ますが、一般的入手ルート及び入手を最小分量単位で行った場合で算出すると、それぐらいになります。単価を下げる方法はいくつかありますが、一番シンプルなのはスケールメリットです。管理人は、フスマやコーンミールを二十キロ単位で買いました。送料が一袋あたりにかかりますが、より大口であれば送料を落とし込んでいくことが可能でしょう。大量に消費できるならば、より安価にできる、スケールメリットはシンプルであるが故に絶大ではあります。ただ、個人ベースでは、あまり参考にならないな、とも思いますが。

 もう一つは、もうちょっと安価な素材を使うことです。例えば、コーンミールと書きましたが、コーンミール以外でも作ってみたことがあります。具体的にはポテトパウダーやコーンスターチなどで、特に後者は安価で大量に入手可能です。少し成長が鈍いような気がしなくもないのですが、このあたりは温度など他の要因もあるので、気のせいだったのかもしれません。あまり調べる気がなくて調べていないのですが、フスマが無くなったとき、グリセリンとハチミツ、コーンスターチとビール酵母だけで餌を作ったことがあります。かなり粒子が細かいので、練るのがたいへんではありますが、そうした手抜きの餌でも、成長することはします。色々やっている人たちに聞くと、まぁだいたい、スイミーとかハムスターフードとか、そのへんのならどんな餌でも蜂蜜かけておけば累代繁殖できるんじゃないの?という意見が多い気がします。実は、蜂蜜じゃなくて糖蜜というか、シロップでもいけます。全部をシロップというのはやったことないのですが。半分ぐらいをオリゴ糖とかの安価なシロップで代替し、コーンスターチを使えば、かなり安価に餌を作ることが出来るでしょう(それでも、いつも乾燥ビール酵母は入れているので、十分な栄養価はあるだろうと思われます)。

 
 

  #100、つまり100メッシュのステンレス網の上にいるハニーワームの初令幼虫。抜けようと思えば、抜けられるということが見て取れる。全長はメッシュから換算すると1.3-1.4mmほどだろうか。
 

■ハニーワーム飼育ケース制作■

 ハニーワームの飼育で一番重要なのは、脱走されないことす。つまり、脱走されないケースを作る必要があります。これが存外難しいのは、ハニーワームは脱走することにかけてはミルワームなどとは比べものにならないぐらい芸達者であるからです。

 まず平滑な面でも登れるということが一つ、それから、顎が存外に強力で、ポリエチレンの蓋(端的に言えばタッパーウェアの蓋)程度では、囓って刳り貫いてしまうことがあります。蓋を囓るのは、餌としてというよりも、ハチノスツヅリガとしての性質――綴る過程で、周辺に潜り込もうとするためで、潜り込める段ボール用紙などがある場合は、これは抑制傾向になりますが、それでも高密度で飼育している以上は、絶対ではありません。幼虫の頃から、ちびちびと柔らかな蓋を削る傾向があるので、ケースには相応に硬度のあるものを使用する必要があります。海外では瓶に金網を使うのが一般的なのは、このあたりに理由があるのでしょう。

 管理人は、フタと本体が共にポリプロピレンの容器を使っています。シーリングは柔らかいシリコンですから、潜り込まれれば囓られてしまいますが、消耗材として取り替えが利くこと、餌と足場に注意すれば、現状問題にならないので、このケースで制作しています。

 このあたりも気になるならば、ガラス瓶の蓋にホールソウで穴をあけ、内側にステンレスメッシュを貼り付けるのがベターではないかと思います。瓶の蓋を固定してホールを開ける技倆があるならば、だいたい、似たような工作になるでしょう。

 道具一覧。瓶の蓋に丸く穴を空けるなら、ホールソウが便利。自在錐よりも安価で使いやすい。ちなみに写真にあるのは、BOSCH 木工ホールソーセット PR-HS11 八本セットのひとつ。 木工用だが、ポリプロピレンのカットなどには十分使える(ただし、ポリプロピレンは粘りがあるので、使用時に注意は必要)。余談だが、このホールソウセットの一番小さいサイズで空けられる穴が、呼び径16mmの塩ビ管の外径と等しかったりする。

 ケース制作に今回使用する道具一覧です。

 必須:カッターナイフアクリルカッターグルーガン (ホットボンド)、半田ごて (なるべく大きいもの。もしくはホットナイフ )、金バサミ 、錐(もしくは竹串)、ケガキ

 あると便利なもの:電動ドライバ&ドリル (メーカはなんでもいいでしょう。管理人はBLACK&DECKERとかBOSHとかRYOBIとかを持っています)、定規、サインペン(下で書きます)

 
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 飼育ケースにするケースです。いわゆる食品保存用のケース(写真はアスベルというメーカのキッチンボックス )。素材はポリプロピレンです。先にも書きましたが、噛み抜かれないのであれば、素材はなんであってもよいでしょう。

 あとは、密閉できる、ということでしょうか。密閉性がないと幼虫がどんどん逃げてしまうからです。タッパーウェアなどは、本体は問題ないのですが、フタが柔らかいので適しません。

 
 定規は当てるだけなので、ストレートな木片でもオーケイ。

 まず、適度な大きさのステンレスメッシュを用意します。初令幼虫が出ないよう、#120以上の細かさが求められます。管理人が使ったことがあるのは、#120乃至#160のものでしょうか。
 ステンレス以外の素材、例えばナイロンや不織布などの樹脂製のメッシュは、易々と噛み砕かれ、一日と持ちませんので使えません。

 

 上蓋に、油性ペンでささっと刳り抜く予定部分を書きます。定規はまっすぐな線を引くためのものなので、木片でもいいですし、さほどまっすぐでなくてもいいならフリーハンドでもいいでしょう。

 

 角の部分に、ドリル、もしくは錐で穴を空けます。これがあると、アクリルカッターが無理なく止められますので、この作業は地味に重要です。写真の穴は小さいですが、もっと大きい穴でも良いでしょう(穴の角がカーブするのでそっちのが良いかもしれません)。

 

 いわゆる罫描きの作業です。カッターでも良いですし、ケガキでも、ちょっと強引ですが錐でもかまいません。ガイドとなる板、もしくは定規に当てて、軽く、すーっとなぞるだけです。

 

 アクリルカッターで、ひたすらに削っていきます。カットするより、削るという感じですね、アクリルカッターは。結果としてカットできるというだけで………アクリルケズリーとか名前変えたほうがいいんではないでしょうか?(もちろん冗談です)

 コツはひたすらちびちびと作業することです。一気にやろうとするとよれたり、怪我の原因になってしまいます(経験談)。だいたいが削れた段階で、カッターでカットしてもオーケイ。ただし、力を入れすぎるとカッターの刃がパキリと折れるので注意が必要です。工作の基本は、「力を入れずに作業する」だと思います。こと一般家庭のDIYで、切断において力が必要というのは、たぶん方法が間違っているのではないかと。安全に力を使わずに作業しましょう。

 

 ミニノコなんかを使っても、なんでもいいので、とにかくカットして刳り抜く!

 切った後の部分は乱れていると思うので、これを丁寧に慣らします。いわゆる”バリ”をとる作業です。カッターでやってもよいのですが、世の中にはノガバー というこれを見事にやってのける素晴らしい道具があります(面取りスクレーパ とか、バリ取りバー とも言うようですが、どれが正しいんでしょうか)。こういう作業をよくやる人は一家に一本!という品なのでオススメです。安いですし。

 
 ヤスリがけよりも、カッターやケガキで傷をつけるのが一番楽でしょう。

 地味作業はひたすら続きます。刳り抜いたその縁取りに、カッターで刻みを入れていきます。交互に、がしゃがしゃと入れていきます。これは、後々ホットボンドで接着するときに、よりしっかり接着できるようにするためです。しなくても上手くやればくっつきますが、やっておくとより楽になります。

 

 メッシュを、ふちどり1cm程度の幅ぶん大きくカットします。ステンレスメッシュを金バサミで切断するときは、屋外でやるか、新聞紙を敷いた場所で切断し、すぐに新聞紙をまるめて捨ててください。細かい繊維が部屋の中に残っていると、衣服に付着したりして、最悪目に入るとたいへんなことになります。その場合は眼科にかかる必要があるでしょう。ある程度幅広く切るときは問題ないのですが、数ミリ程度を切断して大きさを調整しようとするときが危ないように思います。

 

 ポリプロピレンに接着する接着剤は存在しません。そこで、グルーガンというものを使います。これは熱可塑性樹脂を熱で溶解させて、接着面に塗布し、それが冷める前に接着したい物体同士を押しつけて、くっつけるというような代物です。溶かすホットメルト(ホットボンド)には幾つか種類があり、それにより使用温度が違います。写真のはたしか1000円しないぐらいの安物です。

 

 グルーガンにも種類があり、またそれに使うスティックにも種類があります。樹脂そのものの違いもそうですが、スティックの径が違うとか、そういう差もありますね。今回のような場合は、PP(ポリプロピレン)にくっついてくれるものであれば、問題はありません。

 それを、写真のように、縁取りに塗りつけていきます。すぐに冷めてしまうので、ここに一生懸命ステンレスメッシュを押しつけても、まず間に合いません。メッシュ自体の放熱効果もあって、中途半端になってしまうのが普通です。上手くやれば、出来ることもあるのですが………。

 

 簡単なのは、ホットボンドが溶ける温度にしてしまうこと。ホットガンという手もありますが、ここでは簡単に半田ごてか、ホットナイフで、メッシュの上からあてがって、押しつけることで溶かしてしまいましょう。

 錐は、ホットボンドが溶けたら、固まるまでの間押さえておく役割。周辺が固まったら、半田ごてで軽く熱して抜き取り、指かなんかでささっと慣らせば見た目もそれなりになります。

 

 半田ごては安価な(1200円ぐらいかな)ものがよいでしょう。高いものは勿体ないです。ただ、安価なモノは、もともと樹脂用ではないわけで、かなり熱くなるので、簡単にホットボンドが焦げてしまいます。上手くやれば焦げないで見栄え良く出来るのでしょうが、このへんは工作の腕が出てしまいますね(苦笑)

 ケースの蓋の内側。シーリング用のゴムを交換できるように、こうして凹みがあります。これは飼育ケースにする上では邪魔なので、ホットボンドを盛って埋めてしまいましょう。

 
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 盛りつけて軽く表面を冷やした後、蓋をケースにえいやとかぶせて押しつければ、上手い感じに成型できたりします。本体もポリプロピレンなので、くっつきづらいので。でも上手くいかないと、本体のほうにくっついてフタから外れてしまったりするのですけども………(がっかり)

 

 これでケースは完成です。培地が発酵したりしないよう、ハニーワームの飼育ケースは、なるべく広い面積の通気口をとるとよいように思います。

 湿度が篭もらなければ、粉ミルクなどを入れても、ダニが発生しづらいという気もしますしね。問題は、ケースを積み重ねられないことですが、そのあたりは金属棚などを使って、上手いこと対策するのがよいでしょう。

 この細かさのステンレスメッシュを使うのは、初令幼虫が逃げ出さない為だと先に書きました。もしも、それなりに大きいサイズしか飼育しないという場合―――繁殖が目的ではなく、1cm程度のサイズで購入し、そのままストックしておくのが目的であるならば、ケースの通気口はこんなメッシュではなく、ホールソウで穴を開けて、100円ショップで売っているステンレスの茶漉しを落としてホットボンドで固定してしまうだけで十分でしょう。でも、そんな工作するなら、折角ですから全部のサイズに使える今回のようなのを作ってしまうのがオススメですけれど。

 

 左下などに、噛み跡があったりする。これはタッパーウェアのようなものを改造して作ったケースに入れていたとき。初令虫では突破までは至らないが、十分に囓ってしまえる顎の強度があることが分かる。
 

■ハニーワーム養殖方法■
 さて、飼育ケースもできたので、いよいよ、わさわさと殖やしていきます。というか、まぁそれほどたいそうなことをしなくても、わさわさ殖えます。むしろ、コントロールすることが飼育する上で課題になってくると言えます。

 飼育繁殖ですが、培地を密閉容器の下二~三割分ぐらい敷き詰めます(ただし、通気しやすいよう、五センチ程度まで。場合によっては、鉢底網を丸くして固定した筒を縦に立てて、下部まで通気が得られるようにするとよりよい)。

 あとは、幼虫を入れて適温にすれば問題なく成長します。適温は30℃前後。空中温度が30℃でも、幼虫が蠢くケースは、熱が発生してそれ以上の温度になります。孵化を促したり、急速な成長を促したい場合は、もう少し上げても問題はない様ですが、管理人はそこまでの効率を求めていないので、そんなに高温では飼育していません。26-28℃程度でも、時間がかかるだけで、十二分に繁殖しますし、成長します。

 食べられる餌が無くなると成長が止まったり脱走を試みたりするので、培地が少なくなってきたら、新しい培地を加えるか、新しい培地を入れたケースに移動します。

 此の時、新しい餌の上に、潜り込んでいるハニーワームごと古い餌(ハニーワームが出した糸で綴られた糞がまじったもの)を載せ、上から光を当てると、下へ下へと移動していきますが、光を当てなくても暫くすれば餌を求めて下の方に移動している気もします。勿論、ハニーワームを取り出して移動してしまうのが一番よいのですが、そう簡単にもいきませんしね。

 移動したら古い餌は取り出します。環境や湿度にもよるのでしょうが、時として黴びることがありますので、常に清潔さには注意を払いましょう。黴びの問題が発生しなくとも、餌が発酵する(白くなりお酒っぽい匂いがしてきます)事は避けられません。目下、コレを如何に抑制するか(蜜蝋を多めに入れてみたり……)が手間を減らす上での課題と言ったところでしょうか。

 この、餌というか、餌と糞が混ざり合って発酵してしまう問題もある為、密閉容器で育成するのは現実的ではありません。

 餌が古くなると、発酵やダニの問題が頭を悩ませるようになるのは避けられませんから、できれば、餌がすべて消費され尽くされる前に、そのケースのハニーワームは使い尽くしてしまう、というのが一番理想的かと思います。


 段ボール紙。終令幼虫の回収に使えると共に、産卵場所としても有効である。終令幼虫をこれで回収し、そのまま産卵用ケースに入れてしまうという手もある。

 段々の間に入る。ただし、紙の厚さは1.5-2cm程度がよい。幅がありすぎると、三匹から四匹が段の中に入って、中央で蛹になったものが出てこられないという事態が発生することがある。

 段ボールを剥がしてみたところ。蛹が入ってる繭は非常に丈夫で、ハサミで切断しないと、蛹を無事に取り出せない。硬貨の右側がメスの蛹、左側がオスの蛹である。

 繁殖させる場合は、終令幼虫まで育て上げ、その上で蛹にして、そして羽化するを待ちます。

 このとき、幼虫と一緒に蛹を管理する意味は殆どありません。蛹になろうとしている終令幼虫は、白く丈夫な繭を作るので、すぐ分かるでしょう。餌の中に埋もれているコレを取り出すのは、いささかメンドイです。餌から離れてフタの裏などにくっついて蛹になるものもおり、そういうのを累代の種親用とするという手もあります。

 ただ、幼虫が蛹になる場所として、ここは良い、と思えるような場所を最初から用意してやってもよいかもしれません。

 管理人は最近は、左に紹介しているように段ボール紙を使うことが多いです。段ボール紙にも、細いものや太いものがいくつかありますが、これは暑さが7mm程度のそれなりに丈夫な段ボール箱のもの。残念だがAmazonさんの箱は、段が小さすぎて使えなかったりします(Amazonさんにどっぷり漬かっている人の意見)。

 蛹の段階で取り分けてしまうのには幾つか理由があって、そもそも、蛾になるとハチノスツヅリガは飛翔するので取り扱いが面倒きわまりないので、管理人はこれが嫌いです。幼虫を取り出すときに邪魔だし、しかも、餌と一緒にいれておくと鱗粉を餌の上に振りまいたりと良いことがひとつもない。つまり、成虫は成虫のみで、幼虫とは別に管理すると楽だと思います。


 手前がメス、奥にいるのがオス。サイズが全然違うのですぐ分かる。

 さて、そんな訳で、成虫を得られたら、というか、蛹の段階で予定となるケースをセットしましょう。

 繁殖用のケースは、新しい培地を薄く入れた容器の中に成虫を数~10数ペア入れるというシンプルなもの。蛹の段階で雌雄を見分けるのは簡単だし、成虫であれば、メスとオスは大きさとか佇まいとかが全体的に違うので、見分けはさらに容易。あと、ペアと書きましたが、オスはやや多めに入れておくと良いようです。成虫は餌を食べたりはしませんが、過度の乾燥で寿命が短くなるので、冬場はシャーレに入れた脱脂綿などで、それなりの湿度を確保するとよいでしょう。

 産卵は隙間に行われます。場所を何も用意しないと、ケースの上蓋とケース本体との隙間などに産卵され、あとあとやっかいです。そこで、パラフィン紙などで、産卵場となる場所を用意してやるのが一般的とされ、よく紹介されています。ただ、上にあったように蛹の段階で段ボールごと繁殖ケースに入れた場合は、その段ボールに産卵しますので、そのまま放っておいても問題はなかったりします。ただ、段ボールの場合、うまく数を把握して卵を取り出すというのには不向きです。


産卵用紙。カットしたものの両端をステープルで留める。段々折りにしてもよい

 折り畳んだパラフィン紙の間に産み付けられた卵

 卵は1mm以下と小さいですが、大抵密集して産むので、探せば分かりやすいでしょう。ケースの隙間や、餌のかけらの上など、産卵自体は、特に産卵場を与えなくても、必ずするので、殖えると言えば殖えます。であるのに、産卵用紙を入れる意味があるとすれば、繁殖と飼育全体のコントロールが出来るようになるということに尽きるでしょうか。

 産卵されている卵の数がおおよそ分かっており、孵化率が予想できれば、過密にならない数を飼育容器に入れることで、初令幼虫から終令までひとつの容器で育成することが可能です。とはいえ、管理人の場合、そこまで厳密にやっているのではなく、なんとなくこれぐらいかなーみたいな経験でやっているだけなのですが。

 上記の問題を気にしないとしても、パラフィン紙でないならば段ボール紙などの産卵場所を用意した方がよいと思われる理由があります。それは、無計画に培地の中で殖えられては培地の量を適正にするのに苦労するという事です。要は生み付けられた時期の違いにより、一つの培地の中に不揃いの幼虫がうごめく様になると、使う段になって厄介だし、孵化の数がどれぐらいか、或る程度は把握しておかないと培地の調節をどれぐらいの頻度で遣ればよいのかの判断を、逐一見て判断しなくてはなりません。

  一つ二つのケースで殖やすならばどうにかなりますが、然し、餌として有効活用することを考え、多少多くの数を確保しようと思ったとき、其れが我流で自分にしか使えないものだとしても、大きさ、数、成長速度などを制御下に置く方法論を確立しているかどうかというのは、長期間続ける為の重要な要因になってくると思います。産卵場所を用意するという事の意味は、孵化する量、孵化の時期を調整を或る程度可能にするという事に尽きると集約しても過言ではないでしょう。

  パラフィン紙に産卵させ、取り出せば、どの程度の卵が産卵されてているか見た目で判断出来ますし、何時その紙を入れたかで、産卵時期は自然と絞り込めます。多すぎると判断すれば其の時は焼却するなり凍結するなりすればよい。パラフィン紙は軽く吐気すれば鱗粉を簡単に散らせますから、その後で孵化専用の培養地へ入れ幼虫を孵化させれば、見た目にも綺麗に飼育が可能になります。
 尚、ハニーワームは育成の途中で幼虫の糞や、糸くず等のゴミが色々でると思います。そうしたゴミは、さっさと燃やすか、一端氷点下まで冷凍してから廃棄しましょう。中に幼虫が残っている場合、脱走して困った事になります。なんか部屋の中を飛んだりするかもしれないし、もしも近隣に養蜂家があったら、それはもう、いろいろな意味で大変なことになりかねません………ゆめゆめ、ご注意ください?