Fruit fly/ショウジョウバエ
ショウジョウバエは、フルーツフライ/fruit flyの名にあるように、自然下では発酵、あるいは腐敗した果物などの周囲に集まる数mmの小さなハエです。ショウジョウとは、伝説上の生物である猩々から来ており、真っ赤なその目と、酒によく集まるという性質が、酒飲みの猩々に似ているというところから来ているそうです。古い和名には由来に趣きがありますね。
ショウジョウバエは、容易に、安定的に、かつ短期間に大量に繁殖させることが出来るため、昆虫食であり基本生き餌しか食べない小型の両棲類の飼育に有用な餌昆虫です(→培地に就いて)。
特性は、
1.累代繁殖方法が確立されており、容易である
1-1,餌昆虫として利便性の高い、フライトレス(飛行能力の欠落)、ウィングレス(羽の欠損)と云った突然変異が存在し、固定されている。
1-2,安価な自作培地の料理処方、調理方法がほぼ確立している。水を加えるだけで使用可能な簡易培地が手頃な価格で流通している。
2.短期間での大量繁殖が容易である
2-1,繁殖能力が極めて高いので、種親が数十いれば、一ヶ月後には数千から万に増やす事が可能である(種類にもよりますが……)
2-2,一組の種親からでも、累代繁殖限界が事実上存在しない。(少なくとも餌用に用いられているものは)
と云った処でしょうか。無論、欠点も幾つか存在します。然し、それらは、人間側が対応する事で解決することが出来ます。幾つか挙げると、
1.繁殖の時に匂いが発生する
2.些細な事で全滅し易い(温度、ダニの進入等)
3.正直、長期間維持するのはかなり辛い
4.対応策を練っても、大なり小なり脱走がある
1.に関しては、清潔な環境で培養し、培地を工夫すれば、其程酷くは臭いません(ただ、同一室内で生活する、というのは些か厳しく、その場合は換気システムを備えた簡易温室が欲しいところです)。黒砂糖やバナナ等を使った培地で培養すると、酷く臭ったものですが、最近の簡易培地は刺激臭という程のものはありません。
臭いに関しては、培地の工夫云々以上に、清潔さが重要なファクタです。細菌が中に入ると、腐敗して悪臭が発生するようになります。ウジが出す粘液による刺激臭は、或る程度は致し方ない部分があり、此に関しては人間側が適応するしかありませんが、基本的に餌用に使われるショウジョウバエは、臭いは其程出さない方だと思います。培地が鼻を刺す、酸っぱい臭いを発している場合、ショウジョウバエが原因ではなく、細菌が培地を冒している場合が多いのではないでしょうか。
2.温度管理の問題で、主にキイロショウジョウバエに言えます。最高温度で26℃とされているので、夏場には注意が必要です。できれば空調があることが望ましいでしょう。
3.管理人自身が今ひとつ不健康だからなのかは分かりませんが、長期間の維持は相当に辛いと個人的に思います。独りで飼育に望む場合、かなりの覚悟が必要です。
4.家族と一緒に生活している場合は此が問題かもしれません。対応策としては、部屋を密閉してしまうことです。部屋の外には出ない、という風に。そして、部屋の中にはハエトリグモを捕獲して放つか、捕獲容器として、ワインとジャムを混ぜたもの等(甘い匂いがするものが善く、ワインは中々優秀。あとはカルピスとか)を入れたプラケースを設置しましょう。
逐一、欠点を挙げてみましたが、慣れてくれば問題はそれほど表出はしません。2.は、数が足りないから強引に入れただけですし(笑
只、3.に関してはかなりそう思います。長期間続けるには、如何に培地の仕込みを一日の中で自動行為として組み込むかが肝要に成ってくると思うので、歯磨きなんかと同じ感覚になる様、自己の精神と習慣を改造しましょう。
小型の両生類――此処では主にヤドクガエル、マンテラ等ですが――の主食の一つとして有効ですが、有尾類では人気が分かれます。試して見た感じ、ウィングレスの方が人気があったようです(レッドバックサラマンダーなどの小型種の場合)。但し上手く食せないこと、ショウジョウバエは地面より高い場所に移動してしまうことから、餌として入れたどれぐらいが有効に餌になるかは未知数です。此を防ぐ手段として、小さく切った昆虫ゼリーやバナナなどを薄い板に乗せて、地面に設置する方法があります。此により、ハエはその周辺に集まること、少なくとも数日から一週間は生存するので、有効活用されます。昆虫ゼリーに栄養価のあるしっかりしたものを選べば、その間にショウジョウバエが明らかに肥るので、餌として使う上でも魅力的です。管理人はKBファームのプロゼリーという商品を好んで使っていますが、このへんは好みもあるでしょうし、またよりよい商品もあるかもしれないので、いろいろ調べてみてください(そして管理人に教えてくれると管理人が喜びます。喜ぶだけですがw)
カルシウムの粉を塗す(まぶす)ことで一時的に運動能力が下がり、簡単に扱う事が出来る上、白くなるからか、カエルの注意を惹起することができますが、ケースの中で数時間か一日すれば粉は落ちてしまいます。あくまで取り扱いしやすくすること、入れた直後に餌になったときによいということです。ゆえにしばらくすると上に移動したりケースから脱走しようとしてしまいますが、昆虫ゼリーを入れておけばある程度はケース内部に留まるよう促せるのでよいかと思います。
但し、主食として活用する際、考慮すべき点として、温度と餌の量(ウジ一匹に行き渡る餌の量)に依り、上陸する蠅の大きさが大きく変動するという事が挙げられます。太り具合も自ずと変わりますから、栄養価に差が生じるのは一目瞭然でしょう。
低い温度、少ない餌(ウジに対して少ない餌、あるいは、栄養価の低い餌)で上陸させたショウジョウバエ程小さくなります。
例えば、キイロショウジョウバエを18-20℃で飼育した場合、餌が豊富にあっても、1mmに満たない小さなサイズでしか上陸しません。(ある意味、上陸個体が小さい種類には有効かもしれませんが)。
最適温度は24℃~26℃程。上がりすぎると産卵しなくなるそうですし、夏場は注意しましょう。空調で部屋毎管理すれば、温度に関しては意識しなくて済むし、カエルも同じ部屋で飼育するでしょうから、最善であると思いますが、コストは掛かります。
但し、空気温度と培地の温度は常に対応するとは限りません。何故なら、培地が発酵したり、イーストが活動したり、何よりウジが活動するようになると、熱が発生するからです。通常、室温より数度上がると思います。故に、培地の深さ分ぐらい水を張ったバットなどに入れることが過去されていた訳ですが(ダニを防ぐ意味もありました)、僕は個人的に、面倒なので此は推奨しません。空気温度を24~25°に設定するとよいでしょう。僕はその環境で、温度上昇により全滅は経験した記憶がありませんので。
諸々の事情で空調管理が出来ない場合は温室管理も善い方法です。但し、ファンを回して或る程度外気を取り入れる様にしないと、蒸れてしまって拙い事になります。特にキッチンペーパーを蓋として使っている場合の湿度上昇は、キッチンペーパーを容易にウジに食い破られる為、推奨しかねます。
水を張った衣装ケースの中に熱帯魚用のヒーターを入れ、27℃に設定し、繁殖用の容器を中に入れる、という方法を僕が好まないのも、ウジが外に出て来やすくなる傾向があると思うからです。
また、此のケースのもう一つの根本的な注意点は、水が蒸発する事です。張れる水は、培養容器の半分ぐらいの高さ迄という事になりますから、何時の間にか水が蒸発してヒーターが露出する危険性があります。解消方法としては、水深を深くし、煉瓦などの台となるものを入れ、その上に容器を入れる様にすることでしょうか。
此の方式の盲点とも言える欠点は、ショウジョウバエが脱走している場合、水を求めて入り込み、中で死亡する事です。数日を待たずして水質が悪化し、不衛生になりますから、比較的頻繁に水換えを行うか、ショウジョウバエが逃げ出さない様にするか、こまめに浮かんでいる蠅の死体を取り除く様にするか、捕獲容器を多数設置してみるとか、何かしら方策を練らねばならないでしょう。
僕はやったことはありませんが、昆虫食の魚を水槽で飼育してしまう、というのも手かもしれません。