ミスティング対応木製棚/ 200*600*1820(260mm*6段+残寸*1段)

 ミスティングシステム対応小型ケース群。正確には、この棚がミスティングシステムに対応しています。まぁ、対応ってか、排水経路が組み込まれているだけですが。そして、ケースは単に下に穴を空けてあるだけとも言えましょう。多湿系ヤモリ、カエル、トカゲなどに使っています。多湿系であればタランチュラにも使えるでしょうか(もう一工夫すれば、乾燥系でも使えるでしょう)。

 DRACONr.48,ビバリウム特集の号に、雨樋(のようなもの)を使って各ビバリウムからの排水を受け、雨樋から細いパイプで側面を通して一番下の貯水槽まで持っていくという棚が紹介されていました(p26-34)。
 雨樋方式自体は、昔も検討したことがありましたし、ってことは、過去に何処かで見たことがあったのでしょう。ただ、実際に作るにあたって検討対象としなかったのは、二段程度しか作ることがなく、そういう場合は塩ビパイプで繋ぐという方式で現実的にそれほど困らなかったからでしょうか。しかし、塩ビパイプで繋ぐ方式の場合、一個を取り外そうとすると、横並びにある複数の配管すべてを外す必要があったりと、いろいろデメリットを感じてました。前面配管とかだと、見栄えも良くないというのもあります。そして、小型ビバリウムを複数用意したいと思うに至り、今回、底面排水タイプの簡易ビバリウム対応の木製棚を製作してみました。

 排水系はどこにあるのさ?というと、右側の柱の中に埋め込んであります。そのへんは順を追って。

 今回製作したのは、奥行き200mm、横幅は600mmの六段。一番上と一番下の二枚は200*600の板とし、一段を70*600二枚で作ってあります(12枚)。12*900*1820合板から板取。少し余りますかね。(ただし、実寸ままにカットしたので、正確には高さは1830でしたけれど)。ホルムアルデヒドがやや気になりましたが、箱ではないので価格もあって妥協し、ラワン合板をセレクトしました(ちゃんと軽く拭いて、干しましたけどね)。ホームセンターでカット含めても5000円というところでしょうか。

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 カットした側面柱材の一方の中央に、10mm幅深さ10mmの溝切りを施します。写真の丸はあまり気にする必要はありません(なにかというと、溝切りの為のビットを回転していない状態でセットする為に、フォスナービットで8mmほど掘ったものです。そもそも穴にしちゃってもよかったかもしれん………)。溝切りは、東急ハンズとかならやってくれます。

 軽く、水性アクリル塗装。写真は下塗り(かなり適当)。というか、今回、それほど力を入れた塗装ではありません…………というのも、下地処理もしなかったし、二度塗りにあたってサンドペーパかけたりとかは面倒だったのでしませんでした。もちろん、そういう加工をしたほうが綺麗に仕上がります。最低二度塗りプラス、吹き付け塗装、できれば三度塗りはしたいところですね。色はお好みで。最初はちゃんと塗装することも考えて、側面の板の外側は面取したんですけど、まぁ途中でどうでも良くなりまして………そもそも、習作のつもりでしたし(だからラワン)。見栄えに拘るならばラワンではなくシナ合板あたりを使って、切断面はパテで埋め、サンドペーパで下地処理を………といったプロセスが必要になります。

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段はそれぞれ、外側から木ネジ止めというシンプルさ。接着剤は用いませんでした。

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溝を切ったところに、10径の塩ビチューブをシリコンで埋め込みます。塩ビなのは単に一番安かったからです。普通のゴムホースでも何でも構わないと思います。

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マスキングテープを貼って、ホワイトカラーのシリコンで埋め込みます。暗色系の塗装ならば、ブラウンかブラックのシリコンで埋め込めばよいでしょう。

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こちらは上にあたる部分。上を塞ぐのではなく、開けたほうが水が流れやすいので、わざとこうしてあります。

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 余剰部分を除去し、マスキングを剥がして、乾燥させます。本当はシリコンで完全に隠れるぐらいにしたかった(というか、そうなる予定だった)のですが、棚材の厚さと同じになるようにシリコンを削ってみたところ、ホースが少し見えてしまうことに。このあたりはホースのたわみや膨らみなどがあるのか(深さは10mmになるようにちゃんと計測したのですが)。このあたりを完全に消すには、深さを11mmにするべきだったのかもしれません(ただし、12mmの板厚なので、11mm削るのは少し怖くて………)

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24時間経過してシリコンが固まったものがこちら………。

 12mmの端材から取ることもできますが、今回はあまりだった9mm厚の板から。40*60mmにカットしたものを12枚。ホールソウの38mm径のものでカットしたのですが………よく考えてみると、今回のパーツに必要なのは60mmのほうであって、40mmであろうと45mmであろうとあまり意味はなかったので、600*900あたりにホールソウで穴を開け、それを半分に切ったほうが楽だったな………穴をあけながら考えたのでした。

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切断面処理とかはもうひたすらに面倒なので(まぁ今回はもともと習作のつもりだったのと、実用上は問題ないのは分かっていたので)、ヤスリなどはかけず。木工用ボンドと、15mmの釘で固定。はみ出た部分は濡れた布で綺麗します。

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 面倒なので、もうひたすらにべったべったと塗装してしまいました。

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 カッターで丸く穴をあけます。縁より、1mmぐらい余裕がある感じで………。
 シリコンや塩ビにアクリル水性塗料は乗らないので、あとで白い部分は濡れ布巾でこすれば綺麗になります。

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 横の配管は、今回は、塩ビパイプの縦割りです。縦にはホームセンタなどで依頼しても無理!と言われる加工なので、これは自分でカットするしかないのですが、、けっこう大変です(怪我をしませんよう)。やる場合は、上下から切って、中央で最後切り終わるようにするとよくできるかもしれません。まぁ、なんにしてもメンドイ作業なので、丁度良いサイズがあるならば、雨樋のほうが手軽で良いのではないかなと思います。僕は40mm塩ビパイプがあまっていたので、これを使い、それにあわせて段の隙間(60mm)をあけましたました。もちろん、丸いカーブは、40mm塩ビパイプを使うことが分かっていたからホールソウで円形に刳り抜いたもので、他の形状の雨樋などを使うならば、それにあわせた形状やカーブで切る必要があるでしょう。
まぁ、シリコンで接着してしまうので、固まるまで上手く固定できるならば、正直なところそれほどしっかりフィットする形状である必要性はない気がしますが………。

 マスキングをして、塩ビ管と受け板の間、それから側面などをべたべたとシリコンで埋めてしまいます。1.5mmぐらい厚で盛ってしまうとよいかもいしれません(最初は、このカタチに切ったプラ板でも張り付けようかと思ってましたが、面倒になったので<またか)。固まったら、穴に通ずる部分を少し削って、流れやすくします。それから、塩ビ管自体、この排水系があるほうを低く、というよりは、ないほうの塩ビ管の下に多めにシリコンを入れるなり、何か釘をかますなどして、1mmほど高くするとよいでしょう。

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ある程度貯まると、なんかだーっと流れていく、みたいな-。うむ、しかし側面が、こうして写真で見ると、ものすごいやっつけ仕事だな………(汗)

 いやー、実は、ポリプロピレンのヘラがなかったから、割り箸でやったんですけども(爆) やっぱダメだねー。道具は重要だー(はっはっは)。

 ま、そんなどうでも良いことはさておき……… <ぇ

 最終的に、一番下の段に用意したポリプロピレンの容器に排水を貯め、ポンプで排水しています。水位で検出して排水させることができると便利ですね。

 何故、側面の板に排水系であるチューブを埋め込んだのか? というと、これは排水をチューブでやると、スペースや設置に差し障りが出るような気がしたから。あと、見栄えです。ていうか主に見栄えです。
それに、ケースの横に隙間があると、どうにも気になるといいますか………。まぁ、写真はケースとケースの間がすかすかではありますが、しかし、これは排水パイプが見えるのとは、また別な問題なのです!(笑)
それに、まぁ、この棚はもともと、横幅にぴったり合うようなケースを将来的に作って置こうと思っているのです。正確には、横幅300のものを二個、200のものを三個、150のものを四個、かな。

 まぁ、例えば、もし側面に排水系チューブがあったら、横に並べられませんよね? 背後にあったら、後ろに背中合わせに棚を置くことができません。(実際、背中合わせにもう一個作りたいと思っているのです。それで、排水槽を一緒にする)

 この、側面の柱になる板材の中に排水系を埋め込む、というのは、アクリル棚で既にためしていました。というか、先にそっちを思いついたんですけども。もともと、引き出しタイプのヤモリ棚をどうにかミスティング化できないか?と悩んでいて、「ケースに排水系を一個一個作って、手間に排水経路を這わすと、見栄えがわるいし、引っ掛かって壊しそう………」というところから始まり、「側面の柱に排水系を組み込んでしばえば万事解決」ということに思い至りました。
 アクリルで作る場合は、5mmアクリルに3.5mmの深さで(丸型に)溝を掘ったものを経路にしました。横の排水は、酒船石のように横板に刻んだ溝が排水路として機能し、その溝が柱材の溝に接続し(接続部分以外は、カッティングシートが貼り付けてある)、一番下まで繋がるというものです。各棚のポリプロピレン容器には、ミスティングシステムが接続され、底面には穴があいていて、ズレを考慮し、広めに削ってある場所へ排水される………というもの。

 なかなか便利であることは便利なのですが、これは加工が大変で、アクリルの強度も下げるので溝を切るラインを考慮しつつ補強する必要があったり、まぁ、一個作ったらもう二個目を作りたくなくなった(苦笑)、というのもありますが、そもそも、5mm厚程度のアクリルでは大きなものは作りようがないというのが最大の理由です。この厚さでは、前面に補強を入れられないかぎり、横幅400mm以上のものを作るのは現実的ではありません(テンションを利かせるという手もなくはないですが………)。もしアクリルを分厚くしようものなら、コストが青天井です。

 なので、これの大型版を作るのは、最初から考えていなかったのですが、「雨樋タイプ作りたいけど、側面や後ろやらに配管が出るのはもうやだな………」とぼんやりごろごろしていたとき、「………ああ、アクリルの方式みたく、木材に切った溝に、何か管を埋め込んで、そこに雨樋を接続させちゃえばいいのか」ということに気づいたので、試してみたのが今回です。

 奥行きは200なので、MサイズプラケやLサイズプラケを使うことも可能。タランチュラに活用しはじめたので(主にアヴィ、ポエキロ、アジアの地中棲の連中かな)、いよいよ、「あんた、タランチュラを飼育してるって言ってますが、なにかメンテナンスしてるんか?」状態に………(遠い目)

 …………まぁ、飼育するとはどういうことか、という哲学的命題は気にしない方向で!

 加えて言えば、「別に排水系が見えてるのとか全然気にならないのですが?」という場合は、各雨樋ごとに穴をあけ、排水チューブを接続し、下の雨樋にさらに落とすようにして、一番下で受けるというのが、まぁ普通に簡単じゃないかなーと思います。てゆーか、溝切りは危険だから人にやってもらいましょ~ヽ(´_`)ノ

 余談ですが、写真ではミスティングノズルをケースに接続していますが、針金とかで、フレキシブルに動かせるように棚に固定してしまうことも最初考えました。ただ、写真のケース群は、キイロショウジョウバエやピンヘッドコオロギも脱走できないよう、40メッシュで作ったので、外部からミスティングをした場合、上手く中に入ってくれなかった分が、側面を伝ってこぼれてしまわないか?という懸念があったので、今回は見送りました。

 余談ついでにもうひとつ。写真のケースの元になった、世にある、特に100円ショップで販売されているケースで、上蓋があけられる構造になっているものは(ちっちゃな米びつ的なやつね)、なんだろう………底面がフラットではありません。これはローコストで成形しようとすると、こうなるものなので、100円ショップのケースでこうなっているのはある意味自然ではあります。この手のケースを使おうとした場合のネックは、中央部分が一番盛り上がり、周囲に向けて低くなっていること、です。つまり、中央に穴をあけても、そこが一番上で、四方に向かって下っているので、水が上手く切れず、貯まってしまいます。そうでない製品もあるのでしょうが、少なくとも身の回りの100円ショップにはなさげでした(普通のタッパーとかならあります)。

 そういう場合は、たこ糸などの、吸水性がそこそこあって、まぁそこそこ摩耗に強そうな糸を、周囲にちょっと這わし、その上で排水口から5-10mmほど垂らすようにすると、毛細管現象で、あれよあれよと排水してくれます。尚、写真のケース群は、10mmの穴をあけて、鉢底網をしいてあります。鉢底網の間から、ひょろっと糸が出てる感じでしょうか。
 この方式は、これは小さいケース以外でも使えるので、「なんかケースの底の水がたまってる感じがやだなー。もうちょっと上手く排水できないかな」と思っているミスティングシステムユーザーは欺されたと思ってお試しください。上手く言ったら「おお!」と思ってただき、上手く行かなかった場合は「欺された!」ということで諦めていただければと思います?