Oreocryptophis porphyraceus coxi

 戦いに勝つのは、常に備えていた者だ。日々の備えを怠らず、精神の弛むことなきものだけが勝利し、平和に浴すること叶う。

 ――――Si vis pacem, para bellum (汝平和を欲さば、戦への備えをせよ)。

 戦いはいつ始まっているのか。勝者は知っている。戦いは常にそこにあるのだと、戦いとは生きることを望むのであれば、常に始まり、終わることなく行われているものだと知っている。目に見える戦いの終わりは次なる戦いの始まりである。
 俗っぽく云うなら、バレンタインデーにチョコをほしがるならば、一年前から、2/15から、チョコレートを貰えるような人間として振る舞っていなければ、2/14当日になってどうこうしたところで勝算は望むべくもない。

 だから、帰宅する前から戦いは始まっているのだ。靴すら疑う必要がある。故に、服装は簡素で洗いやすく、安価なものがいい。バックも、薬剤を塗布できるような素材のものを選んでおく。見栄えなど二の次だ。

 ――――――玄関には、出かける前に準備した、ディスポーザブルグローブと、専用のプラケース、クッキングペーパー、ゴミ袋、そして各種薬剤がある。予めそれらを用意しておくことは基本以前の当然だ。手袋を装着、生体をすばやくパッケージから取り出してプラケへ収容。パッケージや紙袋をそのままゴミ袋に廃棄、ダニアースをそこへ噴射し、封をする(場合によっては、靴もその中に入れてしまい、薬剤処理し、翌日に取り出す)。

 プラケには予め、クッキングペーパーが敷いてある。頸部を軽く持ってヘビの顔を隠しつつ持ち上げ、顔に直接かからないようにし、胴体中程から下半身にかけてフロントラインスプレーをミストする(勿体ないので、このとき、ヘビにかからなかったぶんはクッキングペーパーに吹きかかるようにする)。ヘビを持ち上げ、かからなかった部分のクッキングペーパーに同じく噴霧して薬剤を染みこませる。薬剤で濡れたクッキングペーパーで、鱗の隙間に薬剤が入り込むようにヘビの胴体を拭う。途中で薬剤を追加しよく薬剤を染みこませたクッキングペーパーで、頭部から頸部にかけて薬剤を塗布していく。 薬剤が経口で体内に入ると死ぬ危険があるため、鼻の穴や口の中には入らないように注意しつつ、万遍なく薬剤を塗布していく。見落としがちなのが顎の下や目の周りといった入り組んだ部位だ。隙間に入り込んでいるのを見逃すと、戦いが一気に長期化する。こうした場所に塗るときは、綿棒があるとよりよい。そっと目を指で動かして、360度、全周囲に塗り込む。ただし皮膚が薄いので、目の裏には塗り込みすぎないように注意が必要だ。とくに小さい個体の場合は。かさぶたにもなっていない傷口や化膿した傷口がある場合はやっかいだ。ダニはそういった傷口を好む。だが、傷口にフロントラインを塗り込むわけにはいかないから、傷の周囲に塗るに留め、長期戦を覚悟し、目に見えるものは除去、傷口には抗生物質入りの軟膏を塗っておく。

 使ったクッキングペーパーをケースにしっかりと敷き、その上にヘビをケースの中に戻し、新しく薬剤を塗布したクッキングペーパーで、プラケースの外周に薬剤を塗布していく。ケースを収納する予定の場所にもクッキングペーパーか新聞紙を敷き、同じく薬剤を塗布することも忘れない。ケースから万が一にでも出た場合、その外で食い止めるためだ。

 先述したように、フロントラインスプレーの成分は経口摂取すると危険である。それにエタノールがかなり含まれていて、すぐに乾くので、薬剤が乾ききるまでは通気をよくしなくてはならない。特に幼蛇の場合、プラケースの中のクッキングペーパーが乾いてから中にいれるようにするのが安全だ(だから、塗布する用と、収容用と二つあると便利だ)。通気が悪いと、(管理人は経験したことはないが)、ヘビが死んでしまうこともあるらしい(余談だが、トカゲは種類によっては薬剤にめちゃくちゃ弱いものがいて絶対ダメなのとかいるという話だし、ヤモリも皮膚から染みこんでしまうので全般的にフロントラインスプレーは使えない。管理人がやったことあるのは、グリーンパイソン、ボールパイソン、アジアの各ナミヘビ、コーンスネーク、クリボーといった蛇連中だ。そもそもヤモリにつくダニは種類が違うし、違う方法で駆除できるが。トカゲはあんまやってないのよくわかりませんな………)。

 ここまでやったら、手袋を外し捨てる(さきほどダニアースを曝露したビニール袋の中に捨てる)。ヘビが入っていた布袋やケースなどは、物によっては破棄、とっておきたい場合は、速やかに熱湯につけ込み、界面活性剤が入った洗剤で洗濯する。この当たりの作業をするときはあまり動き回らない。なるべく早くに服も全取り替えし、洗濯機に叩き込んで洗剤を投入して回しつつ、その合間に風呂場に直行、全身と、あと髪の毛ををざっと洗い、新しい服に着替える。

 プラケ内部のクッキングペーパーが完全に乾いていることを再度確認し、水入れやシェルタを入れる。予定されていた場所(検疫場所)にプラケの下に敷いたクッキングペーパーごと移動させ、数日間ほど様子を見る。
 検疫は最低でも二週間から一ヶ月は必要だ。もしも、半日程度後、黒い粒のようなダニが落ちていたら、警戒レベルを上げ、検疫は最低でも最後にダニを確認してから一ヶ月、できれば一回脱皮するまでの間行う。この間、フロントラインスプレーの場合、卵には効果が無いという話なので、一回目から一週間ほど日をあけて再度、薬剤塗布を行う。

 飼育部屋へ導入するのは、完全に綺麗になったと確信できたらだが―――当然だが、この間、ヘビの種類によっては、ストレスを極力少なくする工夫が必要になったり、場合によっては同時に駆虫も行わなくてはならない。状態によっては、もちろん、ダニ駆除よりも状態の立て直しを優先させる必要がある場合もある(ただ、ダニがいる環境で長期飼育できるとも思えない。ストレスにもなるのでダニ駆除は立て直しの一環であるように思う)。

 薬剤の費用はそれなりの額になるが(まぁ、新規導入しなければ殆ど掛からないはずなんだけどね!)、餌代などの必要経費と同じものだと割り切るしかない。平和とは、維持するのにお金のかかるものなのである………

 …………ちなみにヘビの場合は上記のような感じですが、ちょっとやりすぎな感も少々あるし、種類によってはこの方法がダメなこともあるでしょうし、あとケースとか部屋の通気性とかいろいろなファクタがあると思うので、真似して生体がどうなっても管理人は責任持ちませんですよ~(このサイトは常にそういうスタンス!)。

 途中にも書きましたが、トカゲやヤモリにはフロントラインスプレーは使えないと思いますので、別の方法をとっています(トカゲは種類によるでしょうが。樹上や沙漠にいる連中はダメなんじゃないかな…………頸部に塗ると鱗の間を毛細管現象で伝って口に入る危険があるから、塗って大丈夫な種類であっても塗る部位にもコツがあるらしいと聞きましたが、詳しくはやったことないからわからない。モニターとかギャリワスプにやったことあるぐらいかな…………)。
 種類により方法はそれなりに違います。基本は、ケースの外に出ないように、ケースの外に薬剤を塗布したクッキングペーパーを広い範囲で敷いて、こつこつ焼いた針でダニを殺すっていう原始的なスタイルですが………ヤスデとかも似たような感じでしょうか。それで部屋を分けておき、拡散しないようにして(テーブルの表面に殺ダニ剤を塗っておき、その上にプラケを載せるイメージ。もちろん虫の場合はそういうことはしない)、居なくなるまで様子見です。

 …………というわけで、意味不明なテンションで意味不明な文章を書いてしまいましたが、あまり深く考えずに生きていこうと思います。そういうの気にしていたら、そもそもこんなサイトやっていないってものですよ?

 WCの蛇には注意を払っていますが、油断しがちなのがCBで、コーンスネークでもお店がダメなとこだと普通についてくることがありますので(経験はあります)、油断はできません。更に油断できないのがイベントで、ちゃんとしたお店でも、隣に管理の杜撰な店の出展ブースがあると、前日設営の場合、前日の夜とかにダニが移動して………ということがあるので(経験が、以下略)、こういう場合は重点的にチェックが必要です。

 蛇が何匹もいる場合、もし侵入を許して蔓延したりすると、しゃれになりません。ダニが媒介する何かがあるかもしれないし(てかありますよね、そりゃ。封入体とかもダニでも広がるんじゃなかったでしたっけ。経験したことないですけど…………)。駆除は一苦労どころではありません。
 いえ、まぁ、最後にダニが検疫段階ではなく、飼育しているところに入っちゃって何匹にもうつるようなのが発生したのって、もう十年以上前で、その頃はそこまで飼育数が多くはなかったから、そんなには苦労はしなかったんですが、でもまぁ二度としたくない経験ではありました(正確には、その経験以降、検疫をすごいしっかりするようになった)。

 以降、ちょっとでも疑わしいことがあれば(たいてい調べると、そこらへんにいるダニなのですが)、全ケースの床材交換とか、薬剤の使用とかをするわけで、めちゃたいへんだし、特に薬剤はリスクと背中合わせ。
 それを考えれば、入り口で徹底的に注意するに越したことはないのです。しっかし、ホント薬剤代ってかさむなぁ……… <そもそも普通の人はヘビをそんな何匹も飼育しない、というツッコミをいれるべきでは?