昼頃には青空だった空も、夕刻が近づくにつれ白の面積を増やし今は曇り空と言ってよく、暑さは和らいでいるはずだったが、歩き出して四時間も経つと、それを喜ぶ気力も失せていた。
サバナ気候のリンチャ島の乾季は、空を薄雲が覆うような天気でも、十分に暑い。Tシャツはとうに絞れば滴るほどに汗を含んでいる。顎から滴となった汗が落ちても、シャツの色が変わることはない。水分と共にミネラルも失われたせいなのか、いくら水を飲んでも渇きは治まらない。旅行先では、やはり粉のポカリスエットは重要だったな、などと思う。サバンナでミネラルを含む土を食べるという動物たちの話を思い出す。
起伏に富んだ丘陵から広がる眺望は乾燥していた。乾季の今でも、雨が全く降らないという事はなく、夕方から深夜のどこかで短時間ではあるもののスコールがしばしば降るようだが、大地を潤すには全く足りないのは明らかで、雨季には海に注ぐ川も、今は土に含まれる水分が土の色を変えることで、うっすらと川底のかたちを主張するのみである。
そのそばを、ドラゴンが歩いているのが見えた。指を差し入れても第一関節ぐらいで底に触れる水たまり求めて、日差しの和らいだこの時間に木陰から姿を現したのだろうか。その足取りは緩く重い。だがその速度が、彼らがこの地で生きていくには最適なのだろう―――少なくとも、この地に放り出されれば一週間と生きていられるか疑わしい自分に比べれば、この地に住まういかなる生命であっても、その存在は理に適っている筈なのだから。
旅行に出ると、その旅の途中で、いつもこう思う――なんで、自分はこんなところに来てしまったのか。家でゆったりと過ごせばよいのに、わざわざこんなところに来て、何がしたかったのだろう。日本に戻ったら、もうこんな風に海外に出掛けたりはしないで、静かに生きることにしよう………問題は、日本に戻るには、歩いて港まで戻らなければならないということだろうか……
―――リンチャ島はインドネシアのレッサー・スンダ列島にある島のひとつで、東をフローレス島、西をスンバワ島に挟まれたコモド国立公園(Komodo National Park)の中にある。日本から訪れるには、まずインドネシアはバリ島行き、デンパサール空港からフローレス島のラブアンバジョー空港へ、そこから港へ出て、船を利用して行くことになる。
インドネシアへの入国は、ガルーダ・インドネシア空港を使う場合、入国審査を飛行機内でしてくれるというが、此以外の航空会社を使用すると、入国審査でデフォルトで二時間から三時間ぐらい待たされる。実際、日付が変わるぐらいまで待たされた。日本からインドネシアに到着したのは夜10時ぐらい、最初から一泊する予定だったので、問題はなかったが、乗り継ぎを考えていたら、どういうことになったのだろう、と思ったりした。
…………と、そんなわけで、旅行したときの話でもつらつらと暫く書いていこうと思います。気分で。時折いきなり語り口が変わりますが、そのときの気分とか天候とかそういうのです。なにしろ管理人は何も考えていませんから。
別に連続ではなく、合間にどうでも良い莫迦話とかどうでもいい馬鹿話とかどうでもいいアホな話を折り込むと思います(つまりいつものことだということです)。
そんな訳で今回はコモド島旅行記第一回でした。