By: C

10月 14 2017

Category: Field and Travel, Gecko, Mascarene, Phelsuma, Tools, 旅行装備

Aperture:f/7.1
Focal Length:13mm
ISO:250
Shutter:1/400 sec
Camera:E-M1MarkII


Phelsuma cepediana (outskirts of L’Etoile,Mauritius,2017.07)

《ヒルヤモリを見に行こう 2017(マスカリン諸島編) 1/3》

ヒルヤモリを見てみたいなと思ったので、マスカリン諸島へ行ってみることにした。マダガスカルではなくマスカリン諸島にいくことにしたのは、単純にモーリシャスやレユニオン島のヒルヤモリが好きだからである。マダガスカルのヒルヤモリももちろん好きだが。

ヒルヤモリを”見る”といっても、これらのうち幾つかは高い木の上のほう(といっても、5-12mとかであるが)にいることが殆どで、滅多に降りてくるということはないようだ。

なんとなく遠目に見ることができた、というだけでは、いかんせん物足りないだろう。はっきり言って、肉眼では見た気にはなれないと思う。それこそ、電柱の先よりも高い場所にいるヤモリを遠目で見て、見た気になれるぐらい視力が良いなら話は別だが。

それに、折角なのでそれなりに写真を残したい、となれば、望遠レンズが必要になる。また、管理人のようにあまり目がよくない、という場合でなくても、遠くにいるものを確認するときには望遠鏡があったほうが便利だ。これはカメラで代替できなくもないが、「見た」という実感には、やはり望遠鏡があったほうが良いように思われた。フィールドスコープほどでなくてもいいので、軽いものを持っていくとよいだろう(管理人はカメラがあればいいだろう、と思って持っていかなかったが、結論としてはあったほうが便利だったなぁと思った)。

今回管理人が使ったレンズは、35mm換算で100-400mmの望遠レンズで、これに1.4倍のテレコンバーターを組み合わせた(具体的にはZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDというレンズ。10年くらい前に買ったやつだ)。
つまり35mm換算で140-560mm相当となる機材ということになる。いわゆる100-400mmの望遠レンズをAPS-Cで使えば、だいたい似たような画角になるだろうか(正確には機材によってはもうちょっと倍率が高くなるかもしれない。このへんは、そもそもメーカーによってセンサのサイズもアスペクト比も違うから、突き詰めてもしょうがない)。

このぐらいでは、Phelsuma cepedianaのように殆ど下に降りてこないヒルヤモリの場合、これで撮影しようとしても全然遠く、アップで撮影することは出来なかった。アップで撮影したいなら、35mm換算で600-840mm相当のレンズがあったほうが良さそうである(管理人は持っていないが)。

ヒルヤモリの撮影は、種類にもよるが降りてこない連中は、言うなれば、小鳥よりさらに小さいものを撮影するような装備が必要ということになるかと思われる(もちろん降りてくる種類はその限りではないが、それを常に期待するのは無理がある)。

このあたりをイメージするのには、カワセミHPというサイトのカワセミ計算機がとても便利だと思う。

ただ、単焦点レンズだと、例えば広範囲に集合しているところを撮影しようとすると距離をとって撮影したりしないといけない。被写体がセンシティブなヒルヤモリの場合、距離を取ろうと動けば逃げてしまう懸念は拭いきれないところで(まぁ鳥とかもそうだろうが)、単焦点を選ぶかズームを選ぶかは難しいような気はする。この辺は、管理人にはまだ経験が足りないところである(そもそも単焦点望遠レンズとか持ってないけど)。ただ、浅い経験からいうと、こちらが姿を見せた時点で、あるいは日常的に外にいるときはそうなのかもしれないが、ヒルヤモリはけっこう動いてしまうので、速度勝負というところがあり、ズームだったら両方を易々と撮れるというわけでもない。ただまあ、やはり単焦点のほうが少し難しいかもしれない。

加えていうと、レンズを持ち歩いて撮影する場合、やはり重量に限度というものがあって、望遠ズームレンズも望遠単焦点も両方持ち歩く、というのはいささか現実的ではないから、どちらを重要視するかで決めておく必要があるだろう。

また、これは余談となるが、カメラメーカーにもよるが、屋外で、特に森林でのレンズ交換にはゴミが入ってしまうリスクがあるから、広角でも撮影したい場合はサブカメラを用意しておくのが無難だと思われる。ゴミ取り機能に定評のあるメーカーならその限りではないが、それ以外のメーカーでは、機能に違いがあるし、やはり屋外のチリやホコリは屋内のそれとは質が違うので無理ないことだろう。

ロガーによる記録によれば、今回、管理人はトータルで100kmぐらいを歩いている。距離でいうと大したことはないが、平地もあったが山道もあるわけだし、当然だが水と食料、雨具、救急キットなど諸々含めるとそれなりになる(ひとりで歩く場合、例えば転んでしまって足を悪くしたとき、人のいるところまで移動できるよう、テーピングや止血道具は最低限持っているほうがいい、と管理人は思う。まぁ、これは出先で転んだり崖から転がったりとかしているような、ミスをしないのであれば問題はないが。管理人はよくそういうミスをするので持って行っている)。

つまり、装備の総重量は、体力のない管理人には切実だ。

トレーニングして体力を万全につけて行けばいい、というのは簡単なのだけれど、そうもいかないこともあるのだから、行ってしまうのがいいんじゃないかと思う。訓練に訓練を重ねて達人になってから戦場に行くのか?みたいなノリである。
ただ、最低限の治安など安全面の情報収集や、衛生面の基礎的な知識だけはしっかりしておいたほうがいい、というか必須なのは言うまでもないが。(管理人は破傷風、A型肝炎、狂犬病、黄熱、腸チフスのワクチンを打ってある。まぁ腸チフスはそろそろ切れてると思うが)。

カメラか望遠鏡を持ったら、モーリシャスへのチケットを買う。エアモーリシャスが毎日ではないにせよ、アジアの幾つかの空港からの直行便を運行している(日本からはもちろんない)。あまり調べていないが、毎日ではないが、シンガポール、香港、上海などいろいろあるようだ。ドバイ経由でもよい(だいたい16:40とかにモーリシャスに到着する)。管理人は今回、マイレージを使おうとか色々あって、クアラルンプール経由で行ったが、これはクアラルンプールから直行便ではなく、シンガポールを経由してモーリシャスへ行く(トランジットとトランスファーでいうところの、トランジット。同じ飛行機であり、一度チャンギ空港で飛行機から降りて、機内持ち込み検査を受けてもう一回搭乗する)。この便だと、18:45とかに到着する。ただ、クアラルンプール空港での待ち時間が中途半端に長く、なんか時間を無駄にしている感がある。その上、エアモーリシャスと提携している航空会社が日本にはないので(と、一旦書いていたが、よくよく考えると海外の航空会社を調べ切れていないかも……コードシェアではなくてマレーシア航空をそのまま使えばそのまま荷物を引き継いでくれたとかあるのかな?)、荷物を一旦受け取らねばならないため、その待ち時間中にちょっとクアラルンプールまで遊びに行くとかは難しい)。

利用していないが調べた範囲でよいなと思ったのは香港経由である。これは、香港発が深夜1:45なので、時差の関係があるからだが、現地時間の朝7:15に到着する。つまり朝から活動できる(移動による疲れを無視できるなら、だが)。香港に23:00ぐらいに到着する飛行機があれば理想的だ。乗り換えを含めても15-17時間ぐらいで済むかもしれない(日本の何処から行くかで変わってくる)。

コスト重視なら、エアアジアがモーリシャスへの飛行機を再び飛ばしてくれるよう願掛けをするといいかもしれない(※ 関空発だが、2016年の10月だったか、まぁとにかく後半に就航した路線は、ばかみたく安かった。残念ながら本年三月末で終わってしまった)。

モーリシャスは日本と同様、左車線の右ハンドルの車が殆どなので、そのあたりのハードルは低いが、信号機はあまりなく、基本的にはラウンドアバウトがあるので、どのように通るか確認しておくのがよいかと思われる。また、運転がなかなか荒く、追い越しはどんどんするし(これは問題ではないが)、車線に戻ってくるときは1車体ぐらいしか空けない。バイクは多くはなく、あまり自動車は慮ってくれないので、自分で頑張るしかない。まぁ、ベトナムとかに比べると、それほど危機感はない気はしなくもない(比較対象がダメな例かもしれない)。まぁ、つまるところ運転にはかなり覚悟が必要な場所なようだ。

交通手段をどうにかしたら、まずは目的となるヒルヤモリの生息地をチェックする。モーリシャスにはPhelsuma ornata, Phelsuma cepediana,Phelsuma guimbeaui,Phelsuma rosagularis,Phelsuma guentheriが現存している。モーリシャス統治下であるロドリゲス島にはPhelsuma gigas,Phelsuma edwardnewtoniというヒルヤモリがいたが、人間の環境破壊で絶滅した。
Phelsuma grandis,Phelsuma laticaudaが帰化しているらしいが、あまり興味がないのでここでは省略する。


有名なPhelsuma gigasの予想復元模型。生存当時は世界最大だった。

今回まともに見られたのはPhelsuma ornata, Phelsuma cepedianaの二つだけだった。Phelsuma rosagularisに関してはそもそも生息地に行けてもいないのだが(天気予報を見たかぎり、天気が崩れそう&平地ではなく山登りが必要だったので、この天気では期待できそうもないな、と判断して、シャマレルの七色の大地の観光とかしていた)。

Phelsuma ornataは一番簡単に見られるヒルヤモリであるようだ。芭蕉やヤシがあるような沿岸部(東側)では比較的簡単に見られる。低木林でも見られる。管理人が見たのは主に東海岸だったが、西海岸沿いでも、例えばブラックリバー国立公園の西北部のゲートへ続く道沿いの林道でも見かけた(余談だが、此処はPhelsuma guimbeauiの生息地だったのだが、残念ながら今回は見られなかった。ただ、話によるともうちょっと南の、別の場所のほうが最近は見やすいそうだ)。

↓こちらはブラックリバー国立公園へ向かう道。

管理人は訪れなかったが、北東部にあるBras D’Eau National Parkでは簡単に見られるらしい。Ile Aux Aigrettes Nature Reserveに行けば、ほぼ確実に見られるし、それほど高くない、目線よりも低いところでも見かけた。どちらかというと、National Parkでのもののほうがあまり隠れず、街外れなどのヤシにいるものはささっと隠れてしまうことをみると、人慣れするとかもあるのかもしれない。


Ile Aux Aigrettes Nature Reserve

ではケペディアナはどうか。

Phelsuma cepedianaは、ornataに比べると、普通にいると見逃すかもしれない。あちらが視界の範囲を過ることがあるから、歩いて探していれば見かけられることもあるのに対し、こちらは管理人が探したような低地のエリアでは、殆どが電柱よりも高いぐらいのヤシの木の上にいるようだった。つまり、上を向いてそこらへんにいるのでは、と探していないと見つけられない。(このページの最初のほう、上から二番目の写真みたいな感じなのは、むしろ見つけやすいほうで、濃い茶色の幹の部分などにいるとけっこうわからない)

川沿いだとオウギバショウにいることもあったが、そういう場所は蚊が多かったり犬がいたりするので注意は必要だ。もちろん、人の畑などには勝手に入ってはいけない。撃たれたりはしないだろうが、あまりよろしくはない。

モーリシャスの自然破壊は著しく、ブラックリバー国立公園などの、猫の額を住処にしているノミほどの範囲を除けば、基本的に自然は残っていないようだ。cepedianaは、モーリシャス全土で見られるようだが、それは過去の姿そのままというわけではないのだろう。壊れた自然の中の隅っこで、どうにかその行き場所を探して生き残っているという感じがする。
具体的には、街中のどこにでもいるかというとそこまでではなく、時折街外れなどに生えているヤシに分断されて生息しているようである。

もちろん、どのヤシでもいるというわけではない。街中のヤシを探してみたが、人が多いせいもあるのか見つけられなかった。というより、間隔の問題かもしれない。都心部ではヤシが隣接することはほとんどない。街中のような断絶しやすい環境では繁殖し続けられないのかもしれない。あるいは、教会の周辺とかであればいるのかもしれないが、いずれにせよ人がいると、その影響でヤモリは隠れてしまいがちなので見つけるのは難しそうな気がする。夏であれば早朝に、という手もあるかもしれないが。

探し方としては、サトウキビ畑の外れや、街外れ、また川沿いや水源地の近くのヤシを探す(別に水源地の近くのヤシでなくてもいるようだが、今回見つけられたのは、溜め池なども含めて水源地近くが多かった)。郊外であってもあまりに開けているような場所では見つけられなかった。サトウキビ畑の外れと書いたが、基本的にサトウキビ畑というのはアブラヤシ以上に緑の砂漠であって、その周辺にいたりすることはないし、どこまでも続いていているので、なんの目安にもならないのだが、それを維持するための水源地の近くにヤシが生えていることが多いようだった。(昨今、このあたりの水回りのインフラを整えようという動きがあるようだが、それが行われると壊滅的な影響を受けそうである)。

トックリヤシのような背丈の低いものではなく、最低でも5-7mはありそうなものがよいようだ。あとは望遠鏡で隠れられそうな枯れた部分のあるヤシをじーっと見ていると、見つけられるかもしれない。ヤシは特定の一種類だけにいるというわけではなく、何種類かのヤシで見られるようだ。



また、ヤシだけでなく、オウギバショウの上のほうでも見つけられることがあるが、低いバナナ(4mぐらい)では見られなかった。川沿いは蚊が多いので対策は講じておく必要がある。余談だが、オウギバショウはマダガスカルが原産で、もともとモーリシャスにあったわけではないそうだ。

話によればcepedianaは標高の高いところにもいて、それはちょっと色合いが違うという話があるが、今回は低地でしか見ていない。ブラックリバー国立公園の少し標高が高くなっているとあるエリアでは、ヤシなどではなく広葉樹などにいるから、まったく違う樹種を探す必要があるという。今回はそういう場所にはいけなかったので、そのあたりは次回の課題だろうか(次回があるのかどうかわからないが)。

抜群に綺麗なブルーに染まっているのがもちろん一番強いと思われるオスで、メスや幼体は緑色をしている。

モーリシャスは南半球にあるから、7月は冬である。平地部では陽が出れば気温は27度、陽が出なければ22度ぐらい。ブラックリバー国立公園などは、曇りだったせいもあるが涼しく、観察には適していない感があった。ただ、歩くには過ごしやすい。

冬だと温度があがるのに時間がかかるせいか、おおよそ10-15時ぐらいが観察に適した時間だった。12時ぐらいで陽が差せば、日影の中で暖をとる複数のヒルヤモリを見られるかもしれない。これが夏でも見られるのかは、行ったことがないのでわからない。予想するなら、真夏の場合には、温度が上がりきらないもっと早い時間帯にバスキングをしていそうな気はする。違うかもしれないが。単純に、真夏は34度まで熱くなるのだから、そんな温度の中でバスキングをしたら死んでしまう気がする、ということ。少なくとも管理人は、夏に行く機会があれば、別の時間帯で探すと思われる。

ともかく、この二種類は探そうと思えば、見つけられる種類だと思われる。管理人は正確な生息地のことは殆ど知らないで、ネット上で観察記録のある町の名前をチェックし、そこへ行き、いそうな木はないかなー?と歩き回って探しただけである。(だからこそ他の種類は見られなかったというのもあるだろうが)

余談だが、Phelsuma cepedianaを簡単に見られる有名な場所としては、ポートルイス/Portlouisから北西に少し行ったパンプルムース/PamplemoussesにSir Seewoosagur Ramgoolam Botanical Gardenという公園がある。有料だが、中では見られるという。ただ、管理人はここでは見つけられなかった(が、これは到着時刻が16時近かったので、遅すぎた感はある)。

(レユニオンに続く)

(なお、以下のギャラリーは時系列では右下のほうが前なので、右下からローディングして読み込むのがよい。よくわからないけどwordpressのギャラリー機能で作るとそうなった。
 このギャラリーはオリジナルサイズの画像がローディングされるので、契約にもよるが、スマートフォンでは閲覧しないほうがよい。多少圧縮したが、たしか全3回ぶん全部で900MBぐらいある)