By: C

10月 20 2017

Category: Field and Travel, Gecko, Mascarene, Phelsuma

Aperture:f/10
Focal Length:12mm
ISO:250
Shutter:1/800 sec
Camera:E-M1MarkII

Phelsuma inexpectata (Manapany Les Bains,Réunion island,2017.07)

《ヒルヤモリを見に行こう(マスカリン諸島編) 2/3》

飼育しているにも関わらず、単に見るためだけに何故生息地に行くのか? これはなかなか言葉で説明するのは難しい。まぁ、端的に言えば見てみたかったから、の一言でしかなく、飼育しているやつを見てればいいんじゃない?と言われたら、うんまぁそうだねぇ、としか言いようがないのも事実だ。自分でもよく分からないというのが正直なところなのだけれど、敢えて言うなら、花火鑑賞士を目指す友人が言っていた「CD音源とライブの違いみたいなものだよね」というのは言い得て妙かもしれない。

さて。
現在のレユニオンに生息しているヒルヤモリは、大別すると2種類、Phelsuma inexpectataPhelsuma borbonica。後者は亜種分けされている。

結論から先に書くと、Phelsuma inexpectataは沿岸部の標高の低いところにいるのだが、Phelsuma borbonicaのほうは標高400-800mぐらいに生息しているので、冬は観察するのに向いていない(まぁ行く前から調べた感じ、天気がよくないと厳しいかなぁとは思っていたが。というか、だからそもそもは五月に行く計画を考えていた。いろいろあってずれ込んでしまったのである)。標高800mを超えると、場所によっては15時ぐらいから、早い場合は11-12時ぐらいから霧が発生することがあるようだ。山の上が霧に包まれるのはもっと早い。結果的に標高の高いところにいるborbonicaはほとんど見られなかった。

場所によっては、というのは、南部のピトン・ドゥ・ラ・フルネーズの南側、Forêt Départemento Domaniale du Volcan Sudのあたりや、北部のLe Brûléのあたりがそうだったのだが、島の中央部、ラ・プレンヌ・デ・カフル(標高は1500-1600m)や、Grand Étang(標高は400-500mあたり)では、霧はそれほどなかった。もちろんそれでも気温が下がったりすると霧がかかることもあったが、標高800mあたり程ではない。このあたりは季節によもるかもしれないし、天気にもよるだろうし、一日ぐらいのことなのでそういう日もあったというだけかもしれないが。星がとても綺麗なので、星空観察には向いているのかもしれない(本格的な人はもっと高いところに行くのだろうが)。

マナパニーヒルヤモリ/レユニオン・ニシキヒルヤモリことPhelsuma inexpectataに関して言えば、見ることは簡単であるように思われた。

行く前は「見られるのかな……?」とやや不安に思っていたが、行ってみたら簡単に見られた。というのも、この種類は生息地がとても限定されていて、レユニオン島の南部、Manapany Les BainsからSaint Josephまでの海岸沿いにしかいない。少し内陸にもいるという話も聞いたが、探してみたが見られなかった。もっとも、それほど長時間探していないし、冬だから日当たりの関係で出てきていなかっただけかもしれない。そして鬱蒼とした森林にいるわけではないので見つけやすい。
 

Manapany Les Bains。道沿いのバンダナスなどで、ヒルヤモリを見つけることができる。

レユニオン島はフランスの海外県なので、車は左ハンドルの右車線、そして欧州の影響が色濃いことが理由なのか定かではないがマニュアル車が殆どで、オートマ車というのは殆ど見かけることがない。というか今回見かけた覚えがない。まぁ管理人はそれほど車に詳しくはないが、興味があったので街中を歩くときに駐車してある車を覗き込んでみたのである。結果北部でも南部でもすべてマニュアル車だった。信号もあるが大半の交差点はラウンドアバウトである(余談だが、右側車線なので、追い越し車線は左側になる)。

そのあたりを把握していれば、高いところに行くのではなく、例えば西回りで街から街へ、また街中を走る分には問題はなさそうである。だが、一旦標高の高いところへ行こうとすると、道は場合によっては九十九折で、そのわりに日本でも都市圏ではあまり見ないような大型トラックがそうした場所を降りてくることがある。ドライバは親切で丁寧だが(モーリシャスとはここが全然違う。いや、モーリシャスは親切ではないという意味ではなく、たぶん親切なのだが基本的に運転が荒いのだ)、相当に運転が得意でないとお勧めしかねる環境であるように思われる。場所によっては急角度の山道が多いので運転が難しいのではないだろうか(途中で止まってしまった場合、そこからの発進が……)。

ただ、人が住んでいる場所であれば、バスが基本的には走っている(標高が高いところは乗り換えてシャトルバスになる)。人がいるところにしか行かないので、観光地であるとか国立公園のような場所に行くときは難儀するが(流しのタクシーというものは存在しないと聞く)、マパナニーであれば、幾つかのバスを乗り継ぐことで簡単に行くことができる。また、料金も手頃だ。ただ、基本的にレユニオンの住人は英語を話さないので、そのあたりは頑張るしかない。数字ぐらいはフランス語で覚えていこう。1:un,2:deux,3:trois,4:quatre,5:cinq,6:six,7:sept,8:huit,9:neuf,10:dix. 料金はいくらですか? Combien ca coute ? まぁ通じればどうにかなる。通じないときは紙に書いたメモを持ち歩こう。それを紛失したら、指折りで示せばいい。あるいは、根気よく身振り手振り。まぁ根気がよいのは付き合ってくれる相手なのだけれど(こうして付き合ってくれても、ボったりしようとしなかったから、やっぱりレユニオンは良いところな気がする。まぁ運が良かっただけかもしれないけれど)。

フランス本国に比べると(比較対象がダメな例だが)、殆どの人がたいへんに親切であると感じた。今回、故障などの不慮のトラブルに巻き込まれたが、助けを求めたら親切なことにいろいろな手助けをしてくれた。とはいえ、それを当てにしてはいけないとは思うし、当たり前だが例外ももちろんいたが、全体的には安心して訪れられる場所だという印象だった。とはいえ女性の一人旅とかで同じなのかというと、それはわからないが。

 レユニオンには北部のサンドニにローランギャロス空港、南部のサンピエールに、ピエールフォン空港という空港がある。日本から行く場合にはモーリシャスを経由するのが基本になるのだろう。エール・オーストラルがアンタナナリボやパリへの直行便を飛ばしているそうだから、マダガスカルのついでにレユニオンというのも可能ではある。日本に帰ろうと思うと、モーリシャスを経由するか、一旦マダガスカルに戻る必要があるだろうが。
 都市間を車で移動するのは何かと面倒なので、モーリシャスから来るときに目的地が南部なら、ピエールフォン空港に降り立って、帰りはローランギャロス空港というののもアリかもしれない。往復航空券が使えないから少し余分に費用はかかるだろうが、北部から南部、あるいは南部から北部へ行くことを考えた場合の時間を含めたコストと比べて、どちらを選ぶか、という話になるだろう。

 Phelsuma inexpectataは周囲から山や川で隔てられたごく限られた地域の沿岸部に生息している、というのは知識では知っていた。
 行く前は、過去に見ていたフィールド写真の雰囲気から、海が見える海岸沿いのヤシなどにいるようだけど、どうやってアクセスすればいいのかな、と思っていたのだが、実際そのイメージ通りではあったものの、必ずしも海が見えるような本当の海沿いのヤシだけにしかいないというわけではなく、マナパニー・レバンの街中でも、道路沿いのバンダナス(タコノキ)や芭蕉、ヤシなどにくっついているのを見かけた。
より正確に言うなら生息地に町が作られたのだろうが(町が作られたことで植生が変わってそこに住めるようになったというのではないだろう)、ともかく、街路樹や庭木のようなところでも多くはなくても見られるようだった。
といっても潮騒を感じる海から数十〜百メートルぐらいの話であり、それよりももっと内陸部に行ったときにどんな場所にどんな風にいるようになるのかは、今回は調べていない。
いずれにせよ生息数はそう多くはないとされている。確か2011年の調査では、3000-5000個体だと見積もられていたようだが……。

この周辺の家にはインエクスペクタータのステッカーが貼られているところが多かった。
ただ、このステッカーにあるhttp://www.nature-ocean-indien.org/にアクセスしても404になる。どこかに移転したのか、サイトは見つからないが、たぶん、FacebookのNature Océan Indien – NOIがこの団体のページなのだろう。
このページのこれとかこれとか、とくにこれは、非常に興味深い。borbonicaになるが、このへんの記事であるとかも。

 街中の個体は木の上を探して歩けば、慣れた人なら比較的容易に見つけられるだろう。裏を返せば、仰ぎ探していなければ見つけられないかもしれないということでもある。実際、道行く観光客と思しき人は(そんな多くはなかったのだが)、管理人が一生懸命ヒルヤモリを探して写真を撮影していても、あまり興味がないようだった。ちらっとみて、なにか生き物を撮影しているのだろうと理解すると興味を無くすようだった。
 国立公園であるとか、自然豊かなところの道沿いで生き物を撮影すると、なにかを見つけたのか?と思って訊いてくるような観光客が多いというイメージなのだが、このあたりはそういう場所ではないということなのだろうか。

 運が良いと下のほうまで降りてきてくれることもあるようだ。運動能力に自信があるからなのだろうか。

 ほとんどは基本的に背の高い木やヤシにいるから、他のヒルヤモリがそうだったように運が良くないと仰ぎ見るしかできないのだが、海岸沿いに行くと、2-3m以下の低いところでも観察することができる場合がある。これは海岸沿いに生えているバンダナスの中に、それほど高くは生育していないものが散見されるからだ。背が低いのが、打ち寄せる波や風の影響なのか、なにか意図的に剪定されてのことかは定かではない。

このエリアは砂浜とかではなく、岸壁になっていて波は強い。落ちたら死んでしまうと思われるので、アクセスしづらいところにあるものを見に行こうというのは、風の強さもあるので試すべきではないだろう。確かに、見下ろす形になれば写真も撮影しやすいかもしれないが、道があるわけではないし、勝手に入っていい場所なのかわからないし。


 幾つかの場所はアクセスしやすいから、そうした場所にいけばいいのであり、そうした場所のパンダナスに果実が熟しているものがあれば、かなり簡単に見つけることができるようだ。写真の場所は、その昔、砦があった場所なのだそうで、それゆえに階段があってアクセスしやすい。ここでいう砦というのは、砲台を備えた外洋に向けた砦だったのだろう。

1ショットに5匹写っているのが、確か最大だったような。


(深度合成写真)

繰り返しになるが、彼らは近づいてもPhelsuma cepedianaほどには隠れない。もちろん不用意に近づけば一旦は逃げるが、そろそろと近づけば、反応してうろうろと動くことはあっても、隠れたり、また出てきたりしてくれるようだ。
よい場所を見つけられたら、ポジションを決めてじっと待っているだけで、色々な角度からのシャッターチャンスに恵まれるかもしれない。なかなか撮影していて楽しいヒルヤモリだった。

サメ……?

(後半へ続く)