もし、ヒルヤモリに脱走されちゃたときの、捕獲方法のはなし。
逃がさないに越したことはないですが、だからといって逃げられた時の対策を考えておかないのは愚の骨頂。考えておくことは良いことだし、知っておくに越したことはありません。管理人はいつもこの手の対策を考えています。しょっちゅう逃げられているからではありませんよ?
二手三手先を考えて、普段から備えて、あるいは対応策を知っておくこと、考えておくことには、意味があります。例えば、部屋に隙間がないよう、エアコンの裏のダクトなど、隙間を予めパテなどで埋めておくことなどもそうですね。
ヒルヤモリは紫外線が飼育に必要だとか必要ないだとか色々言われていますが、少なくとも光があると、それに当たりに来るのは確かです。蛍光灯の下にもよく現れますし、それがLEDでも当たりに来ます。脱走した場合、夜隠れている場所はさておき、昼間は、だいたい「照明が当たっている場所周辺に来る」ことが期待できるでしょう。ケース直上に置いてある場合は、当たりやすいよう、ちょっと隙間をあけるとよいかもしれません。
このサイトではゴミ袋捕獲法を紹介してきましたが、今回はこの光に当たりに来る性質を利用した、照明による誘導を併用する、古き良き(?)捕獲トラップです。
以前紹介したゴミ袋捕獲法は、あくまで目に見えているときの捕獲方法、あるいは移動方法です。つまり、どこにいるか分かっているときに使うもの。どこにいるか分からない、部屋の何処かにはいるが、探そうとするとケースの裏に隠れてしまって追い込めない。そういう場合には、照明で誘導し現れるエリアを限定しつつ、トラップで捕獲してしまえ、というのが今回です。
余談ですが、エアコンや扇風機というのは実はけっこう危険で、普通に考えれば危ないことをヤモリも察して触れなさそうな気がするでしょうが、飼育者が来たときにとっさに隠れようとして………という危険性はあるので、もし逃げてしまったときは、ファンやサーキュレーターを停止させたほうがよいと思います(とめて大丈夫ならば)
エアコンは、えーと、どうしようもないかもですが…………(ネットで周辺ごと覆ったりして、エアコンが大丈夫なのかどうかがよくわからん………)
トラップは、どこのご家庭にでも既にあるものを組み合わせます。これは比較的古くから知られている方法で、言ってはなんですが、たぶん色々飼育していると自然この方法に誰でも到達するのだと思います。早い話がショウジョウバエなんかと一緒でカルシウムサプリメントを使います。
ヤモリの背の高さの、1.5倍から、できれば2倍ぐらいの高さがある大きめのプラケにカルシウムサプリメントを入れ、ケースを振って全体に満遍なく散らしておきます。洗った傷が付いているようなものは望ましくなく、なるべく新品に近いものがよいでしょう。側面にもちゃんと付着するように、ケースの側面の下から8割ぶんぐらいまでは、ケースを倒して振ったりして、付着させます。その後、ケースの底面のどこにでもカルシウムサプリメントが概ねあるような状態にした上で、昆虫ゼリー(ゲッコーフードとか、バナナとか)、あと場合によっては、ちっちゃいコオロギなどを入れておく。
これはつまり、餌とかでおびき寄せてプラケに入ろうとしたら最後、カルシウムの微細な粉が、趾下薄板の表面に付着することで、平滑な壁面に対する吸着力を阻害し、ケース壁面を登攀できなくさせ、プラケの中から出られんようにしてしまう!ということなわけです。
小型の個体ならばこれで確実で、中型種でもだいたい大丈夫でしょう。より大きい種類の場合は、これに加えて、ケース側面にローチ飼育に使われるタンカル(炭酸カルシウム粉末)をアルコールで溶いて塗布を施しておくと良いかもしれませんが、まぁ、そこまで調べていません(だって、そんなに逃げられた経験ないので別に試していないですからな………)
あとはコレを、出現しそうな場所に設置するだけ。
隠れているのがこの棚の後ろ、と分かっているならその周辺に二、三箇所とか、もし分かっていないなら、照明で誘導することにし、複数ある照明は落として、一箇所だけ点けるとかすると良いかも知れません。照明の直下にプラケを置く意味はなく(蛍光灯直下だと隠れたいときに隠れられなくて良くないかもしれません)、照明で周囲におびき寄せるだけなので、プラケは照明のある周辺エリア、ヤモリが登ってきたりすると予想される途中や、下りるであろう周辺に置くのでよいと思います。ちっちゃい蛍光灯ならプラケの上に載せても平気そうですが、どれぐらい発熱するのかは製品によるでしょうから………。
あとは、毎日定期的にプラケをチェック。
餌の甘い薫り、水分、そして照明。これらにより誘導され、けっこうな高確率で捕獲可能です(だいたい翌日から翌々日には引っ掛かっているような気が)。
入っているのを見つけたら、さっさっとプラケのフタを被せてしまい、あとはゴミ袋にプラケごと入れて取り出すだけです。飼育ケースに戻し、たっぷり霧吹きをしてやり、指の間を掃除できるようにしてやればよいでしょう。
フタをするのは、万が一にも逃げられないようにするという意味でもありますが、落ち着かせるためでもあります。ヤモリは人間の姿を見ると、あわてて逃げだそうとして、さらに登れないとなるとパニックになったようにケースの中で動き回ってしまうことがあります(動けないとさとって、びたっと動きを止めることもありますが)。
そのストレスがヤモリに良くないですし、ケースの中でぐるぐる回っているうちにショック症状などを起こさないとも限らないのではないかと思うので、フタをしちゃうのがよいかと思います。上に覆いがくると、動きを止めるようなので、いままでにショックでなんか死んじゃったとかそういう経験があるわけではないですが、さくさくフタをしてしまうことにしています。
この方式で念頭に置いておくべきことは(そうなったことはないですが、予想されることとして)、ヤモリが入ったにも関わらず、そこから脱出されてしまうとまずい、ということでしょう。趾下薄板の能力が低下した状態では、部屋のどこかで登ることが出来ずに身動きがとれなくなってしまう危険性が予想されます。経験はないですが。
したがって、カルシウムは惜しまずがっつり入れてしまうべきであると共に、万が一、中に入っていないけれどカルシウムが動いているような様子が見受けられたら、周囲の床の陰などを探してみるべきかもしれません(いままでそういう経験がないので、どこまで安全なのかまでは、分かりかねます。)。枯山水よろしく、ケースの底のカルシウムサプリメントを、横とか格子とかに揃えるようにしておくと、分かりやすいかも知れませんね。とっても、コオロギを入れちゃったらもうわかんなくなっちゃうのですけど。そういう場合は、ヒルヤモリはかなり視覚に因っているところが大きいので、シャーレやデリカップに入れておくと良いかもしれませんな(シャーレならハニーワームも入れられる気がする)。
このあたりは、リスクを考慮したうえでトラップを仕掛けるべき、ということになります。
いままでゴミ袋による移動法ばかり紹介していましたし、別に触らなくてよいんじゃないかなと思っていましたが、初めてヒルヤモリを扱うという人は、基本的には触らなくてよいとしても、知識として、ヤモリをどれぐらいの力でどうやって押さえたら掴んでいられるのか、どれぐらいの力加減が安全なのか学習するためにも、ゴミ袋ごしか、ゴミ袋に入れた状態でふにふにと触ってみるべきかもしれませんね。
でもまぁ、タランチュラとかは別にさわらんでも扱えるというか、触ってないわけで、やっぱ別に触り加減を知っておくことが必須であるとは思いませんが………まぁ、ヤモリはタランチュラと違って視覚があるから、ちょっと厄介さのベクトルが違いますからなー。タランチュラと違って「触れない」訳ではないので、技能として持っておくに越したことはないのかな。もちろん、ダメそうなら諦めて他の方法や道具を使えば問題はないですが、いろいろ出来るようになっておいて損があるわけではなし、少なくとも出来るか出来ないかぐらいはチェックしておいてもよいかもですね。
大型種であるグランディスやスタンディンギィとなると分かりませんが、管理人はこの方法でPhelsuma ornata、Phelsuma inexpectataのヤングからアダルトサイズを捕獲できているのは確かで、結構気に入っています。まぁ、逃げられなきゃこんな知識いらんのですけどね(苦笑)
余談ですが、こういうのは甘いものが好きな連中は引っ掛かると思うので、セイシェルブロンズゲッコーあたりまでは行けると思いますが、そういうのに興味を示さない、Aristelligerとかの場合は難しいかもしれませんね。まだ逃げられたことないんで分かりませんが…………まぁコオロギを入れておけばどうにかなりそうな気がしなくもないものの、あれは光で誘導できなさそうだから、ヒルヤモリとかより厄介かもしれないですね。ろくでもないな!