Hypomelanistic/ハイポメラニスティック
=Hypomelanistic
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Hypomelanisticは、黒色色素が欠損するのでも、増加(黒化)するのでもなく、その度合いが減衰する遺伝変異。完全に欠損してしまうAmelanisticに比べ、その品種の持つ本来の模様や雰囲気が損なわれない範疇で、明るく美しい色調を持つ個体が多い。黒色色素減衰と呼ばれ、黒色色素への影響が顕著であるため、そちらに目を奪われがちになるが、同時に他の色素が増幅する傾向がある。こうした性質から、他の遺伝変異と組み合わせたとして”外れ”の出ることがない、品種改良に於いて汎用性の高い遺伝変異でもある。
Hypomelanisticは同じタイプの遺伝変異が多く出現しやすい変異で、一つのヘビに複数のHypomelanisticが出現することは、しばしば見受けられる。コーンスネークもその一つであるが、一般的にハイポメラニスティック、と呼んだ場合は、一番最初に固定されたHypomelanisticを指し示す。
コーンスネーク最初のHypomelanisticが発見されたのは1984年と言われている(この個体の捕獲された場所は不明)。これらの個体から産まれた個体をBill Love and Kathy Love両氏が購入し、後にフロリダ州のTampaで捕獲された別個体のHypomelanisticから産まれた個体との間でも個体交換をし、これらの遺伝子を検証、固定化が進められた。このことから、後々も、新しいHypomelanisticが見つかった場合には、まず最初に既存のHypomelanisticとの間で検証が行わるようになった。
Hypomelanisticという変異の特徴は、蛇の持つ雰囲気をノーマルから、何かを欠落させるのではなく、変化させるところにあると云えるかもしれない。
通常、模様には大別して、黒の色素しかない部分と、他の色の上に黒が乗っている部分と、黒と他の色が混ざり合っている部分の三つに分けられる。Hypomelanisticでは、このうち黒と他の色素が混ざっている部分ではほぼ黒がなくなり、他の色の上に黒が乗っている部分では透過するかたちで薄く黒が乗り、結果下地となっている色が透け、黒の色素しかない部分では黒の濃密さが薄らいで鱗の質が浮き彫りになるので透明感が出る。
色調ではそうした変化が減り張りとしてプラスに働く傾向が強いが、反面、黒色色素で模様を全面に出しているような品種と組み合わせると、もともとの品種としての魅力が薄らいでしまうこともある。例えば、幅の広い黒帯を魅力としている品種との組み合わせでは、帯の両縁がそれぞれ薄くなり消えてしまう結果、幅がどうしても狭くなってしまいがちになる。
しかし、黒以外の色調が強調されやすい、つまり欠落や欠損によるものではなく、新しく獲得され色調の変化が付与されるという特徴は、或る程度、模様が薄くなり線が細くなっても、それまであった品種とは異なる新しい雰囲気を感じさせることあり、必ずしもマイナスに働くとも言い切れない。この辺りは、美しさとは好みであるということ以上に、交配による多様性は、往々にしてブリーダーの予測から外れたところにいるような個体を生み出すという、偶発的な面白さにも左右されるからだろう。
模様としてではなく全体の漠然とした色調、雰囲気をその魅力とする品種とのコンビネーションでは、デメリットとなることが無いこともあって、積極的に導入されることが多い。黒色色素が失われるアルビノなどとの組み合わせでも、Hypomelanisticの持つ黒色色素以外の作用が分かり易くなり、少なくとも何ら変化が見えないということは無いように思われる。Amelanistic以外でも、LavenderやAnerythristicとの組み合わせなどを見ればそれは明白だろう。
時に、様々な品種作出の過程から予測されているHypomelanisticの性質として、Hypomelanisticの血統が重なり続け、その中でも特徴的な傾向のものを選抜交配していくと、Hypomelanisticとしての性質が、より色濃くなっていくというものがある。これを調査、立証した人はいないが、経験的にブリーダーの間ではよく知られている事実で、例えばHypo-Lavenderや、Ghostの中では、代を経るがごとに色味が赤みを帯びた個体が産まれることがあり、さらにセレクトによってその方向性へ進み続けるようである。逆にセレクトの方向によっては赤味の増幅が皆無な、黒のみに作用するものにすることも出来るようだ。
そういった個体は、Hypomelanisticの表現形になっているかなっていないかは関係なく、特徴が選抜方向に触れるので、選抜交配によって極端化した特徴は、Hypomelanisticが重なるとより増幅されて明瞭になるというのが正確なところかもしれない。もちろん、これは外見から推察されるというだけの話だが。